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2018.11/22(Thu)

3日間


「う・・・」
 口元を押さえジョーが顔を背けた。
「ジョー」驚いた健が目を見開く。「・・できたのか?」
「お前にしては上等な冗談だが違うっ!」
「そりゃそうだ。おれは何もしていない」
「だーかーらー!」ガシャン! と皿が鳴った。「なんだこの味は。砂糖と塩を間違えたというレベルじゃねえぞ」
「そうか?」健がパクッとひと口食べた。「高級レストランとはいかないがまあまあだぞ。3丁目のスナックでこーいう味の料理を出している」
「・・・そこってジュンの店じゃないのか」
「そうだ。これはスナック・ジュンのデリバリだからな」
「・・・・・」ジョーは絶句した。そして、「よりによってこんな時に」

 今、あの店にはジュン1人しかいない。
 なので必然的に料理も飲み物もジュンが用意しているというわけだ。
 このところ出動が続き、健の表の仕事である飛行場運営やセスナの整備が間に合わず強引にジョーを引っ張って来て、
「どうだ、いい工具だろう。新品だぜ」と、首振りスプラインを握らせ、「試しに使ってみてもいいぞ。ほら、そこのセスナで─」
 要するに手伝わされているわけだ、昼飯付きで。
 が、いくら時間がなくて外に食事に行けないからって、なにもこんな時にわざわざデリバリしてもらわなくてもいいのに。

「仕方がないだろ。ここにあまり人を来させたくないんだ」
 2人はハンガーの片隅でセスナのエンジンと戦っている。あと1時間で仕上げなければ客との契約に間に合わない。
「ジンペイのやつ、今回は長丁場だな」あの夜・・・ジュンから連絡が来てもう3日が経つ。「あいつ飽きっぽいからよ、すぐに戻ってくると思っていたが」            
「ああ。幸いここ3日程は出動もないし、パトロールもおれ達でなんとかしてるがそろそろマズいな。博士に報告しないと」
「ああ、料理もマズいし」                               
「冗談言ってる場合か?」                              
「料理がマズくなったら客が逃げるぜ。あんな小さい店には死活問題だ」 
 メインはあくまでも科学忍者隊の活動だが。
「確かに・・・おれ達も困る」                             
「困るのはお前だけだろ、健。ツケで食えるのはあそこぐらいだ」
「それに─」ギアレンチを握る手が止まった。「今回の騒ぎに奴らが関わっている事も考えられる」
「奴らが雪男を味方にしているのか? なんのために?」
「それはわからないが・・・。とにかくパトロールの合間をみて探しに行こう。露見したらおれ達全員まとめて博士にお目玉を食らうぞ」
「チェ、ジンペイのやつ、余計な手間掛けさせやがってよ」ジョーがツールボックスを引っかきまわした。「あ~あ、それならいっその事、雪男の捜索の方が面白そうだぜ。ジンペイよりそっちを探そうかな」

 翌日、ジョーの願いは叶った。



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2018.02/22(Thu)

過去からの誘い(いざない)


「ルシィ? 相手はそう名乗ったんですか」
「ギャラクターの秘密や本部の在り処を教えると言ってきたそうだ」南部の静かな眼がジョーを見た。「ちょうどその時私は不在だったので直接〝ルシィ〝 と名乗る相手とは話していないのだが」
 ルシィ・・・その名には覚えがある。

 もう5年も前だろうか。エスペラントを習い・・しかし、突然自分の前から消えてしまった女。
 その後の調べで彼女はある組織に入ったと聞いた。それがギャラクターだったのか。

「本当にあのルシィでしょうか」
 5年前の出来事のあと、ジョーは一時的に彼女に関する記憶を失ってしまった。が、今はその大部分を取り戻している。
「声は記録してある。が、それだけではわからない」
 珍しい名前ではない。しかしジョーは彼女に違いないと思った。確証も何もない。単なるカンだが。
「聞いてみるかい?」
 南部がデスクの上をスーと撫でた。と、緑色の光が点き、彼の後ろにある大型スクリーンにスピーカーの偶像が現れた。
『ISO の皆さん、私はあなた達が戦っているギャラクターの幹部・・・いえ、元幹部です』
(ルシィ!)
 それはジョーが覚えているルシィの声ではなかった。だが彼は確証した。この人物は〝ルシィ〝 だと。
 声の主は一方的に用件を言い、すぐに通信は切れた。
「間違いない。彼女はルシィです。サーキット場から突然いなくなった、あの─」
「私には違う人物の声に聞こえるが」
「・・・おれにもそう聞こえます。だけど彼女はルシィだ」
 声も言い方も違うのになぜかその想いは違えない。
「で、どうするんです、博士」
「国連もISO も悪の組織との取引などには応じない。しかし─」
 ルシィの話では、彼女はギャラクターを脱退したという。そしてその時に知り得たギャラクターの情報・・・特に本部の在り処を教えてもいいと言ってきた。大金と引き換えに。
 取引には応じないが、ギャラクターの本部を突き止めるのは彼らの最大の目的だ。国連もISO もルシィを情報提供者として扱うことに決めた。
「苦肉の策ってやつですね」
「その使い方は正しい」ちょっと上目使いに、自分に目を向けるジョーに南部は苦笑した。「もっとも彼女の言っている事が正しかったらの話だが」
「でもなぜおれを呼んだんですか? まさかルシィがおれを指名して─」
「いや、彼女は昔の教え子がISO で働いているなんて知らないだろう。ルシィはラリーに参加してその後に情報を渡すと言ってきたのだ。受取人は君が適任だと思う」
「ラリー・・・」
 ああ、そうだ。彼女も車が好きだったっけ。今も変わらないんだな。
「わかりました、博士」

 グラーク・レーシングクラブはもうとうにない。レース界からいつのまにか撤退していた。
 ルシィの友人がいて、何度かレースやメカニックを見せてもらった。少年だったジョーには望んでもなかなか得られない体験だった。
 もっともその友人はギャラクターに絡んでいて、とんでもないおまけも付いて来たが。
(いや、あの時、すでにルシィもギャラクターへの情報提供者だった)
 トレーラーハウスの横に車を付けジョーは自分の根城を見上げた。
 この何十倍もある大型のトランスポータが並んでいたサーキット。エキゾーストノートを巻き散らし疾走するマシン。それらに目を輝かせて見入る自分。
 なぜかいい思い出ばかりが浮かんでくる。
(だが、今度は)
 ルシィが本当にギャラクターを脱退したのかはわからないが、もう講師と生徒ではない。少年でも学生でも・・・ましてやギャラクターという存在を知らなかった頃の・・・大人の保護の下、ただ年月を送っていた頃の子どもではない。
 情報を提供する側と受ける側に分かれて、もし必要ならおれはルシィを・・・。

 トレーラーハウスのドアノブに手を掛けたまま止まっていたジョーの手が乱暴に引かれた。
 ガチャッと大きな音と共にドアが開いた。
 誰もいないトレーラーハウスは暗く空気が冷たい。ふと、夕食を摂っていない事に気がついた。冷蔵庫にはミネラルウォータしかない。
 夕食は諦め、ベッドに転がった。
 3日後に始まるラリーのために体調を整えなければ。だが寝なければならないと思うほど寝付けない。
 1時間ほどうつらうつらしたがやはり寝られないので、ジョーはその場で服を脱ぎシャワーを浴びた。
 今夜は暑くないのになぜか汗ばんだ体を温めの湯が真っ直ぐに、所々緩やかなカーブを描いて流れ落ちる。
 健やリュウ以外の同年代の少年の裸体を見た事はないが、無駄な肉もなく鍛えられた戦うための身体(からだ)だと思う。
 だがメンタルはまだ10代のそれだ。
 もちろんジョーは意識していない。自分のすべてが強く、どんな事にも立ち向かって行かれると思っている。
 なのにこの苛立ちはなんだ?
〝ルシィ〝 に会う。これだけで体が、意識が熱くなり落ち着かない。
(もしも〝ルシィ〝 が、あの時のルシィだとしたら・・・)

 ─ 私はね、ジョー。もっと大きな仕事をしたいの ─  

 シャワーのコックを思いっきり捻ってジョーは熱い湯を体に叩きつけた。

 ルシィからの2回目の連絡があったのはその翌日だった。
 今度は南部もジョーも同席している。南部が情報提供を受ける事を正式に告げた。
『賢明な判断だわ』
 小さなモニタに映るルシィが微笑む。
「だが1つ条件がある」南部が言った。「ISOの職員を1人付けたい。彼の名はジョー。カー・ラリーの経験もあるので適任だと思う」
『・・・ジョー?』ジョーの映像も向こうに届いているはずだ。『まさか・・あのジョー?』
 ジョーが無言で頷く。
「これから会おう、ルシィ。コースをレッキ(下見走行)してペースノートを作らなければ─」
 ルシィからラリーの参加を持ちかけてきたのだから当然ドライバーはルシィ。ジョーはコ・ドライバーに専念するつもりだった。
 しかし事前に会えれば、その時に本部の在り処を聞き出せるかもしれない。が、
『それには及ばないわ。ノートはこちらで用意する。もちろん車もね。当日でも大丈夫でしょ、ジョーなら』
「しかし・・・」
『レースが始まるまで、なるべく人前に出たくないの。リスクは回避したいわ』
 ルシィはいわばギャラクターの裏切り者だ。大勢の目に晒される時間は少ない方がいい。
「・・・わかった」
 渋々と頷くジョー。ルシィは口元を歪め通信を切った。
「ぶっつけ本番か。なに考えているんだ」
「今は彼女の言うとおりにするしかない」
 南部は別室に待機している健達を呼ぶために通信機を手にした。




17:42  |   Gフィク  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

2017.12/25(Mon)

未確認飛行物体


「上空1万メートル到達」
『よし。こちらの指示があるまで待機せよ』  
「はい、博士」
 ゴッドフェニックスのコクピットが一瞬和む。が、
「ねえ、博士。本当に合っているの? その情報」いつになく不機嫌な口調でジンペイが訊いた。「こんな夜に未確認飛行物体で出動だなんて・・・国連軍の見間違いじゃないの?」
『いや、私もレーダーを見た。完全に補足していたのだが・・・』

 アメリス国上空を飛んでいた国連軍の戦闘機のレーダーに映ったのは単機で飛ぶ小さな物体だった。
 問いかけに応答はなく、所属国の識別コードの発信も無い。戦闘機でも民間の航空機でもこんな事はあり得ないのだ。

「おまけに時速3キロで飛んでいるんでしょ。気球かパラグライダーとかじゃあ─ 」
『高度1万メートルをかね? 』
 飛べない事はないが凍る。
「どこかの国の小型偵察機じゃないんですか」
 大型レーダーの前に座るジョーが言った。それなら識別コードが無くても不思議ではないが。
 だが博士の話では、時速3キロで飛ぶその物体は上空1万メートルの地点から地表に向かって急降下や急上昇を繰り返しているという。そのたびに少しづつだが機体が小さくなっているようだ。
「爆弾でも投下してるんじゃねーの」
 物騒な事を言うジョーに目をやり、が、何も言わず博士が唸る。どうやら博士にもよくわからないようだ。
「国連軍だけじゃない。アメリス国のレーダーにも捕捉された」
 健が目の前のメインスクリーンに映る博士から目を離し、後ろのジンペイを見る。
「視認もしているんだ。皆が皆見間違いとは思えない。未確認飛行物体であろうと偵察機であろうと確認しなくては」
「あー、もうどっちでもいいけどー。早く現れてくれんかのお。おら、ご馳走をひと口も食っとらんワ」

 ロースターから出したばかりの大きな骨付きチキンのちょっと焦げた匂い。
 サーモンのマリネにバジルの香り高いローストビーフ。
 ミネストローネに雪だるまの形のケーキは生クリームたっぷりだ。    

 いつもの多国籍料理の数々。それらを思い出したのかリュウの口が動く。
「おいらだってケーキのクリームをひと掬い舐めただけだよ」
「まあ、ジンペイ。あれはあんただったのね」
 とんだやぶ蛇にジンペイが首をすくめる。
「おっ」突然点滅を始めたレーダーにジョーが声を上げた。「レーダーに映る未確認飛行物体捕捉! 10時の方向だ」
「なんじゃ、そりゃ~ 」 
 軽口をたたくリュウだがその腕は確かだ。博士の指示の下、すぐさま10時の方向に機首を向ける。
「急速接近! あ・・・あれ? 」
「どうした、ジョー」
「消えたぜ、本当に未確認になっちまった」
「未確認を確認しようとして未確認になったんじゃな」
 ちょっと違う。
「下よ! 急降下したんだわ!」
「ゴッドフェニックスのレーダから外れた?」
 信じられないというようにジョーがジュンを見る。と、
「急加速で上昇してくるわ! ゴッドフェニックスの下」
「これ本当に時速3キロの飛行物体なの~、おねえちゃん」
 確かに大型レーダーの下部から点滅が上がってくる。とても時速3キロには見えないが。
 と、機体にぶつかる寸前でクッと横に逸れ、物体はゴッドフェニックスの目前に現れた。
「あ」
「み、未確認飛行物体が・・」 
 こんなに接近していれば、もはや未確認ではなく充分確認できる。
 どう見てもあれは─ 。
「サ、サンタクロース?」
 ゴッドフェニックスのメインスクリーンに映るのは、角の生えた動物が引く橇に乗った太った髭の男。その後ろには大きく膨らんだ白い袋が。
「サンタクロースだ!」ジンペイが立ち上がる。「サンタだよね、おねえちゃん!」
「え・・ええ・・」
 自分の目に映るそれが信じられない。
 ジュンばかりではなく健もジョーもリュウもポカンとただただ見つめるだけだ。
『ゴッドフェニックス応答せよ。健! どうした健!』
 サンタクロースの映像に南部の声が重なる。
「サンタって博士だったの?」
 トンチンカンなことを呟くジンペイだが、他の4人も一瞬そう思ってしまった。
「は、はい。サンタがプレゼントを積んだ橇で・・・我々に手を振って・・・。あ、こっちに向かって─ 」
『何を言っているんだ、健。大丈夫か』
「はい・・ちゃんと受け取ります、プレゼント」

 橇がジグザグに飛ぶ。まるで空間にツリーを描くように。

 目の前に映るカラフルな箱。ちょうど5箱ある。
 小さい箱、大きな箱。
 自分のはどれだろう。何が入っているのだろう。

 平和と自由が入っているのはどれ?

 その夜、無事に三日月基地に帰還したゴッドフェニックスの映像記録用テープには途中から何も映ってはいなかった。



                        おわり





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2017.09/29(Fri)

亡郷


「じゃあな、ジョージ。ゆっくり休んでくれ」

 小脇に何冊かの本を挟みアランは出て行った。
 ジョーはベッドの上で膝を抱えて丸くなった。

 写真の娘がアランのフィアンセだって? 確か以前にサーキットで会った娘だ。
 あの後おれは健の指示で現場に赴き、逃げてくるデブルスターを1人羽根手裏剣で仕留めた。
 まさかあの娘か?
 いや、その時とは限らない。デブルスターとは何度も遣り合っているのだ。
 しかしあの娘はサーキットには来なかった。

 ジョーは両腕に力を入れた。
「眠くなった」と言いながら手足を伸ばさず丸くなるのは自己防衛の表れだろうか。
 だが顔を上げたくない。上げればあの写真が目に入る。
 スピードレースをしようと約束したあの娘は・・・誰だ。


 大怪我を負って帰ってきたジョーは南部博士に叱咤されるのを覚悟していた。
 すでに健から報告を受けていた南部は彼を見ると、「大丈夫かね」とひとこと言っただけだった。
 心配をかけたんだ、とジョーは思った。

 あれだけ銃を向けられたのに怪我は思ったより軽く済んだ。
 持ち前の体力で体の傷の治癒は早かったが、心の傷はそう簡単に治るものではなかった。
 それでもジョーはそれを表に出さなかった。
 誰に─ 南部や健にさえ─ 話したところでどうしようもない。これはおれ自身が向き合っていかなければならないのだ。

『復讐したからってどうなる。 虚しさを味わうだけだ』

 友の声が耳に残っている。
 彼の言った事は正しい。だが世の中、正しい事だけで生きて行けるわけじゃないんだ。
 特におれのような人間は・・・。


 世界平和とか正義のための戦いとか、そんなものはおれにはない。
 南部博士に見せられたメカで、武器で、暴れられる、両親の復讐ができる。
 おれはそれしか考えなかった。そして実行してきた。

 アラン、今度お前と会う時、おれはどのように見えるだろう。
 お前の言うとおり、復讐など忘れて穏かに平凡な人生を送った幼馴染か。それとも、血で手を汚し続けた婚約者の仇か・・・。

 おれはなぜアランを撃ったんだ。
 健に銃を向けられたから? いや、あいつがそんな物で困るはずはない。
 わかってる。なのになぜ?

『復讐に狂うお前の姿が、おれの憎しみに火をつけた』

 アランに銃を撃たせてはいけない。復讐に狂うアランは見たくない。
 復讐に狂う姿を・・・。

 おれはおれを撃ちたかったのか。


 ああ、だが今は眠ろう。もう少しの間だけ。
 お前の言葉を覚えている間だけ・・・。


                                   

                          完




15:45  |   Gフィク  |  TB(0)  |  CM(9)  |  EDIT  |  Top↑

2014.02/22(Sat)

追跡!


「前方20キロ。ギャラクターの小型機がサンツウ森林地帯に向かっているわ」
「やはりそうか」
 パトロール中、たまたまレーダーで捉えたギャラクターの小型輸送機をゴッドフェニックスはノルウーグ国、サンツウ森林地帯まで追ってきた。
 過去のデータからここら辺りに基地のひとつもあるだろうと南部博士が言っていたが、どうやら当たっているようだ。
「よし、そのまま追跡だ。基地を見つけて本部の場所を探り、壊滅する」
「ラジャ!」
 4人が声を揃えた。と、
「お、輸送機が森林地帯に下りていくぞぃ」
「降りられたらゴッドフェニックスではもう追えないわ。それでなくてもここは世界一、二を争う広範囲の森林地帯よ」
 有視界にしてあるメインスクリーンに映る輸送機はみるみるうちに高度を下げて行く。眼下の森林に着陸するのは間違いない。
「よし、各自のメカで追跡を続けよう。奴らの基地を見つけたら必ず連絡しろ。勝手に飛び込むなよ」
 最後の台詞をジョーに向かって言う。ジョーはチェッと舌を打ったが何も言わなかった。
「ち、ちょっと待ってくれ、健」各自のメカに移ろうとする仲間に向かってリュウが声を掛けた。「それだがよ。おらのメカを変えてくれんかの。毎回毎回─」
「おれにその権限はないと言っただろ。博士に直接言ってくれ。行くぞ!」
「ラジャー!」
「残念だね、リュウ。たま~においらのメカと変えてやってもいいよ」
「ええわ。ジンペイのメカも腹がきつい」
「変えられるものならおれも変えたいぜ」
「えー、ジョーも!?」
「なんでだよ。広々としてていいじゃないか」
「冗談じゃねえや。おれはな─」
「無駄口を叩いているひまはない。各自Gメカに乗るんだ!」
「ラ、ラジャ!」
 シートを蹴るように4人は飛び出した。

「なんだかしっくりこないんだよなぁ、この操縦桿」
「き、きつい。苦しい。回らんわ」
「なんでおれがこんな─」
「みんな、いいわね~」
「文句を言うな。行くぞ。ゴッドフェニックス分散!」
 健の合図とともに3台のGメカが次々と地面に下ろされて行く。G1号機は低空飛行に移った。
「健」ジョーだ。「地面に下りたらレーダーが利かなくなったぞ」
「ほんとだ。レンジに捕捉していた輸送機も消えちゃったよ、アニキ」
「輸送機が下りた方角はわかっている。各自用心して向かってくれ」
「ラジャ!」
 上空は高い木々で覆われている。足場も悪く、地面を走る木の根っこに邪魔されてさすがのGメカもその性能を発揮できない。
「くそぉ、とても高速走行は無理だぜ。いっそのこと飛んでやろうか」
 だが、たとえ飛べたとしても頭のすぐ上は太い樹木が縦横無尽に生い茂っている。
「わわわ・・・振動がモロにくるぞい。こーいう場所の走行には向かないわ」
「なにやってんだよ、リュウ。そのまま真っ直ぐ行ったら大木に正面衝突するよ」
「ステアリングが回らないんじゃ。腹につかえて」と、きゅぅぅ・・・と音を立ててメカが止まってしまった。「あ、いかん。ドロにタイヤを取られたわ。押してくれ、ジョー」
「面倒な奴だぜ」
 操縦桿を前後に動かし、ジョーは目の前でタイヤを鳴らしているメカのリアに自分のメカのフロントをつけ思い切り前進した。
 派手なスキール音を撒き散らし、それでもドロ溜まりから脱出した。
「サンキュ、ジョー。ヘタするとサイが来るからのぉ」
「なにわけわかんないこと言ってるんだ。ちゃんと前を見ろ!」ジョーはチェンソーを出し目の前の大木を切っていく。「あー、じれったいぜ」
「2人とも、モタモタしているから健のアニキがかなり先に行っちゃったよ」
「なんだって。あんにゃろ~」
「健のメカは地面でも水の上でも走れるからのぉ」
「こんな事してられねえ。一気に倒してやる。えーと、えーと・・・」
「まさか爆弾を使うんじゃないよね、ジョーのアニキ」
「そりゃダメだわ、ジョー。相手に気づかれる。ここはひとつおらが─あ、ステアリングに腹がつかえてスイッチに届かない」
「リュウだって大きな音がするよ。ここは先行したアニキに任せた方が」
「チェ! またリーダー様大活躍の回かよっ」

 ハッ! と5人は目を覚まし、辺りを見回した。
 前方では南部博士の講義がまだ続いている。が、ますます内容がわからなくなった。
「おいら、変な夢見てた」
「おらもだわ。なぜかジョーのメカに乗っていた」
「え、おれはマメタンクだったぜ」
「マメタンクじゃない! あ、おいらは健のアニキの・・・」
「私は留守番だったわ」
「皆で同じ夢を見ていたのか」
 健の言葉に4人がうーん、と唸った。
「チームワークが大切とはいえ、そこまで付き合わなくてもなあ」
「あんな動きの遅いメカはご免だぜ」
「ヒロインの出番が少ないってどういうこと?」
「おいらは良かったな~。今回は低空だったけどもっと飛びたい」
「おらもうこりごりだわ。尻は痛いし腹はきついし」
「こらあ!」大声が飛んだ。南部だ。「どうも君達は机に着くと眠くなるらしいな。しかしこれからの忍者隊は戦いだけではなく科学的でなくてはならない。科学忍者隊なのだから。そもそも─」
 ああ、またここから長くなる。戦いはいやだが、これなら野外訓練で走っていた方がいい。
 科学とは何かを語る博士の声を聞きながら、5人の瞼はまた下がり始めた。


                                  おわり
11:22  |   Gフィク  |  TB(0)  |  CM(12)  |  EDIT  |  Top↑
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