2010.04/02(Fri)

花束の行方 1

 女性に花を贈るときは、真っ赤なバラが定番だって聞いた。
 確かに華やかだし見栄えもいい。しかしおれはこの花が苦手なので、花屋を覗いた時に見つけた別の赤い花で、大きな花束を作ってもらった。
 ヒラヒラして綺麗で、赤というよりピンク掛かっているがまあいいだろう。値段の割には豪華だ。が、これをあの店まで抱えていくかと思うと・・・。
 だが仕方がない。今日はめでたい日だ。
 おれは覚悟を決めて花屋を出た。
 あのボクネンジンにはこんなマネは出来まい。おれもガラじゃないが、今日はいいさ。
 気は強いが本当はやさしくて、時々女の子の貌を見せるおれ達の中の紅一点・・・。生意気になってきた弟分と2人で、あの店を切り盛りしてるんだもんな。大したものだぜ。 それにあそこは、おれ達の息抜きの場所でもあるしな。
 おれは大きなガラスのドアの前に立ち、ちょっと息を吸った。そして
「一周年、おめでとう!」
 勢い良くドアを開け、出来る限りの笑みを顔面に貼り付けたが
「・・え?」
「ジョーのアニキ・・・。なに言ってんの?」
 かえってきたのは、キョトンとした緑の大きな瞳と眉をひそめた弟分の顔─
「え・・?だから・・一周年記念で・・」
「やだなあ、アニキ。一周年なんてもうとうに過ぎちまったぜ」
「・・え」
「ジョーがレースでアルメニアに行っていたでしょ?あの時よ。その前にパーティの招待状を出したけど、ジョーは返事も寄越さなかったわよね」
「え・・・」
 そんなのあったか・・? 
 いやそれより今のおれの状態をどうする。両手いっぱいに花を抱えて突っ立っているなんて、どう考えてもおれのキャラじゃない。
 花より、おれの顔が赤くなってるんじゃないのか?
「あ、まあ・・その・・。とにかくこれやるよ。じゃあなっ!」
「あ、ジョー」
 ジュンに花束を押し付け、ジョーは店を出て行った。
 「おかしなジョーね」ジュンはちょっと小首を傾げたが、「そういえば、あなたの所も一周年だったわよね。このお花持っていく?キョーコ」
 店の奥のボックス席に向かって言った。
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