2010.09/29(Wed)

輪廻

 このお話はみけこさんのイラストに沿って廖化さんが書かれた「逢瀬の朝」と、その続編を書かれたがあわいこさんの「猫娘」に続くお話です。
 先にこちらの2編を読まれてからお読みいただければ、と思います。

  ・「逢瀬の朝」 →   こちらから
  ・「猫 娘」  →   こちらから


 輪 廻

 目の前の光景を見て、だがおれは驚かなかった。
 地面のあちこちが盛り上がり木は倒れている。そしておれのトレーラーハウスも原型は留めているもののシャフトは折れ、ボディには大きな穴が開きドアが上に見える。
 だが入るのにドアは必要なかった。
 目の前の壁がスッと消え、おれは中に入った。と、小さな女の子が・・・いや、女の子に見えるが・・・。
「どうしちゃったんだい?子猫ちゃん」
 おれが声を掛けると、
「ミャ?ニャネコに見えニャ?」
 「ああ・・・」おれには子猫と女の子が重なって見える。女の子に見覚えはないが、「子猫ちゃんには前に遇ったよな」
 女の子は驚いて自分の体を見回している。そして再びおれに目を向けた。いや、おれの方に─だ。
 彼女にはおれが見えていないようだ。
「どうして?ニャ人間にニャッたのに」
 そう訊かれてもわからねえ。どうやらおれはそういうものが見える存在になったらしい。
「ミャ、ニャに会いたくて」
「それで人間になって会いに来てくれたのか。ありがと、子猫ちゃん」
 おれは彼女が愛おしくなりその体にそっと手を伸ばした。が、触れている感覚はない。
 しかし彼女は気持ち良さそうに身をくゆらせた。

「私ずっとここにいることにしたの」

 この言葉だけ、やけにはっきりと聞こえた。まるで何回も練習したように。
「いいぜ。おれはもうすぐ遠くへ行く。ここにいたかったらいればいいさ」と、悲しそうな目を向けて来たので、「これから両親に会いに行くんだ。彼らにはおれがどう見えるだろう。ガキの頃の姿か、それとも今の姿か─」
 そう呟くおれの目に、女の子がだんだんと猫に見えて来た。そろそろらしい。
「もし、ここに人が来たらそいつに伝えてほしい─」
 だが・・・何も言えなかった。
「ニャ」
 その想いがわかったのか子猫は頷いてくれた。
「うん─。じゃあな、子猫ちゃん」
 おれの目から子猫が消えて行く。
 ベッドも割れた窓も・・・おれの周りのすべてのものが・・・。

「私ずっとここにいることにしたの」

 だがなぜかこの言葉だけは、いつまでも耳に残った。


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