2017.03/02(Thu)

トランスポータ 後編 (ep. G)


「トランポに戻って。研究所と連絡を取る方法を考えましょ」
「その前にリアを開けてくれ。G2号機を見たい」
「ここで?」
「なにか気になるんだ。この目で確認したい」
「わかったわ」
 淳は運転席のスイッチを押した。セキュリティが解除されリアのドアがかすかに開いた。
 ジョーが乗り込む。淳はレーダーで辺りを監視しようとしたが、なぜかこれも作動しなかった。と、
「淳!ちょっと来てくれ!」ジョーの声にあわててリアに回った。「これ、なんだと思う?」
「・・・何かの破片かしら」
 ジョーが指差す先─破損したG メカのボディには無数の機械片がくっついていた。G2号機のものではない。
 と、淳の時計が反応した。
「これ、わずかだけど電磁波を出しているわ。ギャラクターのメカ鉄獣の・・?」
「そうか、奴が爆発した時にG2号機に─。まさかその影響でトランポの機器が狂っちまってるのか?」
「ジョー、これを全部G2号機から取り外して処分して」
 淳はひとつだけ自分で取るとパネルバンに上がった。奥に設置してある分析用の機器へと向かう。
 その間にジョーは車体にくっついている破片を集めると、電波遮断装置の処理箱へ放り込んだ。
「追跡装置とか、そういう物ではないわね。よかった」分析されたデータを見ながら淳がホッと息をついた。「でも念のために研究所に伝えておいた方がいいわ。ゴッドフェニックスにもくっついているかもしれないし」
「こちら、ジョー。健、応答してくれ」
『ジョーか。今どこにいる。いつまで遊んでるんだ』
 今度は通じた。
「チェッ、遊びに行くなら、もっと可愛い子ちゃんと─ 」ジロッと刺すような視線を感じ、「いや、それどころじゃねえ。実はな─ 」
 ジョーは今までの事を簡単に話した。
「で、ゴッドフェニックスにもこいつがくっついているんじゃないかと思って」
『そうだったのか。だがゴッドフェニックスに異常はない。安心しろ』もう修理に入っているという。『だからお前たちもすぐに戻って─ 』
「ジョー」淳だ。「レーダーに多数の機影が。識別反応からギャラクターの小隊だと思うわ」
「なんだと。健、話はあとだ」
 ブレスレットを切り、淳と運転席に戻った。

「追跡装置じゃなかったんだろ。偶然かな」
「あるいは散乱した機械片の所在を確かめるために ─ G2号機にくっついて移動しているから不審に思ったのかしら」
「どっちにしても面倒だぜ」
 もし今、ギャラクターの一個小隊に襲われてもジョー1人で充分戦えるだろう。彼らを守る立場にある淳も格闘技の訓練は受けている。
 だが─。
「とにかく戦いは避けた方がよさそうだ」
 ジョーには珍しく慎重だ。淳が一緒だからだろう。
 しかし〝ギャラクター〝と聞いてジョーのその身が熱を帯びるのがわかる。
 出来る事なら飛び出して戦いたい。奴らの息の根を止めてやる。そばにいる淳には彼の想いがひしひしと伝わってくる。
 だが今それを許すわけにはいかない。
「カモフラージュを。気休めだけど」
 淳の指がコンソールを走る。
 トランスポータの車体が緑色に変化した。これで周りの木々に溶け込める。・・・か?

 ルームランプも消えレーダーのレンジだけが光って見える中、ジョーと淳は息を殺してレーダー内の点滅が通り過ぎるのを待った。
「く、くそォ・・・」
 歯ぎしりするジョーの身に溢れる想いが車内を埋める。
 息苦しくなって、淳はソッとジョーに身を寄せた。無意識か、ジョーが淳の身を抱く。
 レンジ内の点滅はちょうどトランポの真上だ。感知されたくはない、今は。淳は思わず体を固くする。
 それがジョーに伝わったのか、淳の肩に掛かる手にキュッと力が入った。
 ジョーを守らなければならないのに、彼に守られている。だが今のこの状態を・・・このままで・・もう少し・・・。

「通り過ぎた」
 どのくらいの時間が経ったのか、かすかなジョーの安堵の息に淳は目を開けた。その眼に入ったのは大きく書かれた胸の「2」と、逞しく頼りになる暖かいぬくもり・・。
 淳はとっさに身を起こした。が、すぐさま引き戻される。
 頬に触れた胸がかすかに上下し淳の髪にジョーの唇が押し当てられたのを感じた。淳が身を固くする。さっきとは違う意味で。

「奴ら、行っちまったようだ」あっさりと、ジョーが淳からその身を離した。思わず見つめる淳に、「小隊だけだから見逃してやった。メカ鉄獣が一緒だったらそうはいかなかったが」
「・・・そうね」
 今になって早く感じる動悸を悟られたくなくて淳はコンソールに手を伸ばした。レーダーレンジを機影が向かった方向に動かす。
 が、ギャラクターの小隊はもうこのエリアから離脱していた。
「やり過ごせて良かったわ。ナビも正常に戻ったし、早く帰りましょう」
 冷静に、いつもと同じ口調に─。
「南部博士が怒ってるって?」見るとジョーはブレスレットに向かっていた。「おれだって好きでこんな所にいるんじゃねえや。それもこんな怖い奴と ─ いてっ!」
 淳の肘鉄が思いっきりジョーのわき腹に入っていた。


                          おわり




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