2013.02/02(Sat)

試作車

「へえ・・・」
 目の前に現れた青い車を見てジョーが息を漏らした。
 のちにジョーの相棒になるかもしれない・・・が、今はまだ試作段階のストック・カーだ。
 といってもスポーツ・カータイプではなく、どちらかといえばセダンに近い。
 全体は青一色。フロントパネルも一般車となんら変わらず、高速走行を安定させるリアウイングさえ付いていない。
 これがISOの総力を挙げて開発された特殊車両なのだろうか。もう少し目立って格好良い車にしてほしいのに、とジョーは思った。
「バカ言ってはいかん。目立つ車になんかしたら、お前さんはいい気になってあっちこっち走り回るだろ。やつらの目についたらどうするんだ」
 Gメカ担当エンジニアのアレックスが、その鋭い眼をさらに鋭くさせジョーに向けた。ジョーはちょっと驚いて彼を見る。不満は口に出さなかったのに。
「わかるよ、お前さんの考えている事ぐらい」
「チェ・・・」
 体力はジョーの方が上だが、それ以外で勝てるかどうかわからない。だからさっさと話を変える。 「これ、もう乗れるのか?」
「ああ、シートはお前さんの体に合わせて作られている。あとは座席位置の調節と細部をちょこちょこと─」
「へえ」
 さっそく運転席に乗り込んだ。シートがオーダー(個人サイズ)なんてさすがはISOの・・・。
「でも、あまり変わらないなぁ。博士の車だってこれくらいのフォールド感(フィット感)はあるぜ」
「あとから違うのさ、あとからな」
 自信ありげにアレックスが鼻を鳴らした。どうやら変身後の事らしい。
 話には聞いているがまだお目にかかっても体験してもいないのでピンと来ないが、変身するとこの車が時速1000キロのガスタービン車に変わるという。
 フォルムや性能はモニタの画面上でしか見た事がない。早く試してみたいが他の仲間と同様、ジョーもまだその手段を与えられていない。
「座席位置の調節をするなら、ちょっと走ってみないとわからないよな」
 チロッと上目遣いでアレックスを見る。普段は大人びたきつい目が年相応のそれになる。
「わざわざ走らなくても、そのまま座っていてくれればいい。それにもう一箇所、試作品だが調節しなければいけない所が─」
「いーじゃん、研究所の敷地内だけだからさ」愛用のレーシングラブをキュッと鳴らす。「あ、これがスターター?お、いい吹き上がり!」
「こら!館内を走るつもりか!」アレックスは怒鳴ったが、青い車の走り出す気配を感じるとあわてて目の前のシャッターを開けた。「まだ出るな!」
 無理だ。
 キュッ、と床を滑る音を残し青い車は建物から外へと飛び出した。
「これじゃあ調節できないだろ!」
 やられた、とアレックスはハデに息をついた。

「0─100m/h加速4、2秒か。フェラーリ並みのレスポンスだな」
 飛び出しのよさに一度は感心したジョーだが、これは普通の車とは違うのだ。果たしてこのくらいの性能でいいのだろうか。
「まだ変身前だからな。ガスタービン車になったら楽しみだ」
 広い研究所だが敷地内の道路は60キロ制限だ。不本意ながらジョーはスピードを落とした。
 建物をグルリと回り裏側にある楕円形のコースに出た。車両テストを行うための1周5キロの簡易サーキットだ。
 いや、路面は一般道と同じなので厳密に言えばサーキットではないが彼はもちろん研究所の所員もそう呼んでいる。

「ジョー」
 黄色いバギーのそばで手を振っているのはジンペイだ。その横にはジュンの姿も見える。Gメカと呼ばれる特殊車両の中で地を走る3台が揃った。
「見てよ、ジョー。特別運転許可証だぜ」
 ジンペイが出したカードは確かに運転免許証だった。
 この国では13才になれば自動車の運転免許証が取れる。が、実際にはその年令で合格するのは稀で、ほとんどが15才以上になってから手にする者が多い。ちなみにジョーは13才で取った。
 だがジンペイはその年令に達してはいない。
「ちぇっ、お前みたいなガキが易々と取れるなんて、よ。ずるいぜ」
「ヤスヤスじゃないよ。この特別証を取るために二ヶ月間運転を習ったんだぜ」ジンペイが唇を尖らせた。「始めっからGメカのままなら、こんな免許証なんていらないのになぁ」
「あのマメタンクで一般道を走るのかよ」
「マメタンクじゃない!それに走らない!飛べるんだから!」
「あんなのがフラフラ飛んでいたら迷惑だぜ」
「ジョーのいじわる!自分が飛べないからって!」
「ジンペイ」男2人の子どものようなやり取りにさすがのジュンも呆れたように口を挟んだ。「もうやめなさい。ジョーも言いすぎよ」
「ふん」鼻を鳴らしジョーは青い車のドアを開けた。「飛べなくてもこいつの走りに敵う奴はこの地上にはいないさ」
 バタン!とドアが閉まる。ブオン!とひと唸り上げ、そのままコースへ飛び出した。ミラーの中のジンペイがあっかんべぇをしていた。

 今日はコース上に他のテストマシンはいない。めったにない事だ。思いっきり走れる。
 ジョーはアクセルを踏み込んだ。と、
『このマシンは現在時速180キロまでの設定になっています』
「は?」
 突然の声にさすがのジョーも驚いてあたりを見回した。
『スピードを落としてください。1キロ先、右側にバンプあり』
「な、なんだよ、これは」
 声はフロントパネルの端・・・ちょうどナビゲーションの辺りから聞こえる。
『私はこの車のナビシステムです。名前は・・・わかりません』
「・・・はあ?」
 ボンッ!と車体が跳ねた。バンプに引っ掛かったらしい。
『あ~あ、だから言ったのに』
「うるせえな!てめえがゴチャゴチャ言いやがるから─って、誰だよ!」
『ですから、この車のナビ─』
「それはわかった。なんでそんな物が付いているのかと─」
 ふと、出掛けのアレックスの言葉を思い出した。
 シートの位置の他にもう一箇所調節する所があると言っていたが・・・それがこれか? 
 おれは何も聞いていないぞ。
『まだ試作段階です。このマシンのみに設置されています。理由はわかりません』
「・・・・・」
 なんとなくわかる。ジョーは解除スイッチを捜した。
『解除は出来ません。160キロを越えた時点で自動的に作動します』
「なんだよ・・それ・・・」
『速度が170キロを超えました。スピードを落としてください』
「テスト走行なんだから、トロトロ走っていられるか」
『次は左コーナーです。アウト・イン・アウトで抜けてください。そのままストレートで1252メートル─』
「うるせえな、わかってるよ」
『バックストレート向こうのカント(バンク)に入る前に車位を立て直して─』
「・・・わかってる」
『こんな走り方をしていてはタイヤが持ちません。タイヤマネージメントも高速走行の重要な─』
「・・・・・」
『スピードを上げすぎです。あと30キロダウンして─』
「っっるっせえ!黙ってろ!」
 ジョーの足が動き、バンッ!と車体が震えた。
『それでは仕事になりません』
 アレックスめ、いったい何のつもりでこんな喧しい物を付けたんだ。こんなのでおれの動きを封じようというのか。甘いぜ。
 ジョーはさらにスピードを上げた。
 こいつ・・・の言うとおりコーナーをアウト・イン・アウトで抜けストレートをぶっ飛ばす。ギシギシと車体が鳴った。
『時速200キロ、対応速度を超えています』
「お前の言うとおりにしたんだぜ!それ!」
 ジョーは高速のままカントに突っ込んだ。わずか5°ほどのバンク角なので大した事はない。だが少し前に雨が降ったせいかカント面が思ったより濡れていた。
 滑りたがるタイヤをステアリングで抑える。
「タイヤだってまだまだ大丈夫だ。それ!」
 ジョーはステアリングを大きく回した。前輪をロックし今度は後輪を滑らせてコーナーを曲る。
『だ、だ、だめです・・・ビビ・・ガガ・・・こ、こ、こ・・・』
「コンドルか!」
 アハハ・・・とハデな笑い声をあげて、その目がメインストレートを捉えた。
「よーし、コンドルらしく飛んでやるぜ!速度を上げてカントを回って、そのまま飛び出してやる!」
『だめです。このマシンは飛べません!』
「やってみなきゃわかンねーだろー!」ジンペイの言葉を根に持っているのだろうか。「阻止する気ならレトロロケットでもグラップリングフックでも出して止めてみろ!」
『そんな装備はありません』
「じゃあしっかりナビしろよ!」
『ムリでーーす!!』
 ボンッ!とパネルの一部が弾けた。ナビゲーションから煙が上がり車内に広がる。スピードが急速に落ちていく。
「いけね、やりすぎた」
 勢いをつけるはずだったストレートの真ん中をガタプスいいながら走り、やがてガタンと車体が震えて・・・。
「チェ、本当に止まりやがった」
 アレックスにバレたら─って、一目瞭然なのだが─しばらく乗せてもらえないかもしれない。
 だが考えてみれば、こんな装置をおれの車に付ける方が悪い。つまりおれのせいではないのだ。
 
 そう思うとすっきりして、ジョーはノロノロと青い車をコースの脇に移動させた。


                                
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Comment

●覚書き

ある1日を書こうと思ったら「ナイトライダーNEXT」の放送が関東で始まると聞いた。
で、ストーリーを思いつき書き始めたが途中で放り出し、だがある日突然続きが書きたくなって一気に書きあげた。
やはり書きたい時に書くのが1番ね。

しかし完成まで長丁場だったなあ。

G2号機にナビが付かなかったところを見ると、エンジニアが断念したのかジョーが阻止したのか。

   おお、キーワードに「2」が2つ!
淳 | 2013.02.02(土) 15:43 | URL | コメント編集

●2月だもんね♪

待っていましたよー、淳さん♪

いつもながら疾走感のあるお話をありがとうございます\(^o^)/
読んでいる途中で走っている車の色が青から黒に変わりましたが、気のせいかな?(笑)←瞼の裏でのことです

>こんな装置をおれの車に付ける方が悪い
私もそう思います(*´∀`*)
ジョーとマイケルは性格違うもん(声は似てるけど^^;)

>愛用のレーシングラブをキュッと鳴らす
きゃぁぁぁあああ
ぺたるさんのイラストの場面、キターー!

2月22日はどんなお話かなー?・・と軽くおねだりしてみる
南部響子 | 2013.02.02(土) 16:44 | URL | コメント編集

●南部響子さん

さっそくのお出まし、ありがとうございます。

>青から黒に
あはは・・・。
実は書いていて(頭の中で)車のフォルムが変わり、ナビがかの方のお声に聞こえてきて・・・これ何の話だっけ?って(^_^;)

>こんな装置をおれの車に付ける方が悪い
>私もそう思います(*´∀`*)
うんうん。
でもGメカのエンジニアは根性ありますからね。諦めてないかも。


>ぺたるさんのイラストの場面
え~ん、ぺたるさんに怒られたらどうしよーーv-356
あの「蒼いジョー」に太刀打つのは無理です~。← 本題は「蒼い炎」です

>軽くおねだりしてみる
またぁ・・・。
こっちは強引におねだりしちゃうぞ。← まさしくお強請り
淳 | 2013.02.02(土) 17:41 | URL | コメント編集

●淳さん、こんばんは

あのイラストのシーンをどう書かれるか楽しみにしておりました。
今回は長くて読み応えがありました。(^-^)
淳さんは車の描写が素晴らしいので羨ましいです。
疾走感が伝わって来て、実際に見ているかのようです。
私は免許も持っていないので、駄目なんですよ…(^_^;
先にイラストがあって、それをイメージすると言うのも楽しい作業ですよね。
また素敵なコラボを期待しています♪
minako | 2013.02.02(土) 20:26 | URL | コメント編集

●出遅れた!

既に日付が変わってしまっている〜(汗)

>ぺたるさんに怒られたら
こんな素敵なお話に怒るわけないじゃないですか〜(笑) 
レーサーの血が騒ぐジョーと、冷静なナビの掛け合いが楽しくて、笑いながら読みました。
初めて試作車を観たシーンから最後のガタプス言うシーンまで、情景が目に浮かびますね〜。
さすが淳さん!
22日もお待ちしてます♪(と響子さんに便乗してみる)
ぺたる | 2013.02.03(日) 00:46 | URL | コメント編集

●minakoさん

いらっしゃいませ、minakoさん。

>イラストのシーンをどう書かれるか
いえいえ、違います。
この話を仕上げた何日か後にぺたるさんちでたまたま見て、「こんな感じ(のジョー)かな」と勝手に思っただけです。

>車の描写
好きこそナントカ・・・ですが、どうしても独りよがりになってしまうので細かい所などわかりにくいかも(^_^;)

>私は免許も持っていないので
内緒ですが、私も運転免許は持っていません。バイクやホバークラフトの免許もね。
だから好き勝手書ける? ←マッハGOGOGOか?(当時のスタッフで免許を持っている人はいなかった)

>先にイラストがあって
以前に書いたことがあります。これがとても楽しいの!
淳 | 2013.02.03(日) 15:58 | URL | コメント編集

●ぺたるさん

こんばんは(おはよう、か?)ぺたるさん。

>怒るわけないじゃないですか
ほんとですか?
わーい、いい子いい子してくれますか? ←のりすぎ

>冷静なナビ
ジョーと同じテンションのナビだったら・・・(あ、おもしろそう)

>掛け合いが楽しくて
ジョーファンには怒られるかもしれないけど、こーいう3枚目(?)の話も好きです。
書いていて楽しいもん。

>22日もお待ちしてます♪(と響子さんに便乗してみる)
おほほほ・・・。
お2人とも、淳に3倍返しですわよ。
たのしみーー♪

この話は忍者隊の活動をする前のものです。だから車もバギーも試作車。
で、ジョーは何台の試作車をぶっ壊したんだろう・・・。←つづく?

淳 | 2013.02.03(日) 16:06 | URL | コメント編集

●わ~ははは!

そうね~、冷静に経路だけを知らせてくれるナビならジョーも熱くならなかったでしょうが
速度制限をされてはケンカごしにならざるを得なかったでしょうね(笑)
二人(?)の掛け合いが楽しいし、ペたるさんの画が鮮やかに浮かぶ場面もあって
すごく得した気分のお話でした。

え? 22日も期待していいのですね?e-343
へい | 2013.02.03(日) 19:01 | URL | コメント編集

●こんばんは。

失礼しました。
作品が先で、ぺたるさんのイラストがたまたまイメージにあっていた感じだったのですね。(^-^)

>>先にイラストがあって
>以前に書いたことがあります。これがとても楽しいの!
これは本当に楽しい作業ですね。
私も大きなサイトを運営していた頃はキリ番リクエストを受けていて、このイラストからイメージして書いて下さい、と言う絵師の方からのリクエストなんかは楽しかったですよ。
minako | 2013.02.03(日) 20:24 | URL | コメント編集

●へいさん

いらっしゃいませ、へいさん。

人に指図されるのが大嫌いな2番手ですからね。
あーも言われたらやはりケンカになりますよね。

>冷静に経路だけを
Gメカに取り付けるなら、絶対こっちですよね。
なに考えているんだろ、エンジニアたちは。

>制限速度
そう、ナニがいやだって、これ!!

お決まりの掛け合い漫才(?)
でもこのモードになるとシリアスな話が書けなくなってくるー??

>得した気分
私はいつもへいさんちでお得をたくさーんいただいていますから。

>22日も期待
へいさんは5倍(淳に)返しね。
淳 | 2013.02.04(月) 15:27 | URL | コメント編集

●minakoさん

こんにちは、minakoさん。

こちらこそ、(ぺたるさんちに)ややこしいことを書いてすみません。

>絵師さんからのリクエスト
うわ、それは難しい。
淳などは絵を見て、書けるのだけ書いていました。
素人のお遊びだと気が楽ですわ。

でも、「ガッチャッたー」で出たお題をぺたるさんにイラストにしていただき、それのお話を有志の皆さんが140文字で書く・・・なんてできたら楽しいね。
いや・・・けっこう大変かも。
淳 | 2013.02.04(月) 15:37 | URL | コメント編集

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