2013.02/14(Thu)

チョコレートつくったー(ep.R)

「ジョー、明日はなんの日か知ってる?」
「は?」
 突然の淳の質問にジョーは目をパチクリさせた。
「やっぱりね・・・。まったく学習しないんだから」淳がため息をつく。「ま、いいわ。バレンタインを楽しみにしていてね」
 惚れた弱みもあり、ジョーに対して今まではちょっと控えめにしてきた淳だが、この日ばかりはそうも言っていられない。
 それに古い行事は継承していかなければならない。・・・たぶん、これも。
「え?だけど・・・マズイんじゃないか?それって─」
「マズイって・・・。失礼ね。ちゃんと作るわよ」
「お前が作るのか?無理だろう。第一 ─」
「作れるわよ。一晩かけておいしいのを」
「一晩だって?絶対に無理だ」
「できるわよ。いえ、一晩もいらないかも」
「もし一晩でできたらなんでも言う事を聞いてやってもいいぜ」
「ほんと?頑張るわ!」
 意気揚々と淳が拳を握った。

「淳、お買い物?」
「あら、ジュン」
 手にしたハート型を一度棚に戻して淳が振り向いた。その先には長い髪に翠色の瞳のジュンがいた。G要員でジョーのチームメイトだ。
「ええ、明日のための─そうだ、ジュン。一緒に作らない?バレンタインのチョコ」
「淳は作るの?」
 ええ、と淳が頷く。
「あたしは今年は買うことにしたの。ほら、ジュナサン・ストリートのアシュレーで」
「まあ、ジュンも毎年作っていたのに」
 同じ名前なのでややこしいが、本人達はわかっているので問題はない。
 アシュレーは高級チョコレートの専門店で、この時期は特に多種多様のチョコレートが並ぶ人気の店だ。
「この前、店の買出しを健に手伝ってもらってアシュレーの前を通ったら─」

『へえ、うまそうなチョコだな』
 
 ショーウインドに飾られているチョコレートを見て健が言ったそうだ。
 それはバレンタイン用の品ではなかったが、確かに男性の目をも引く、見るからに美味そうなチョコだった。
「それってジュンからバレンタインのチョコを貰いたいってアピールだったんじゃないの?」
「健に限ってそれはないわ」
 ・・・それもそうね、と淳はあっさりと納得した。
 確かに自分が作るよりアシュレーのチョコの方が綺麗で美味しいだろう。しかしジョーに啖呵(?)を切った手前、買ったものを渡すわけにもいかない。
「仕方がない。1人で頑張るわ」
 淳は今一度ハート型を手に取った。

 その夜の淳の奮闘を書くと何ページあっても足りないので省略するが、なんとか完成させた汗と涙の結晶をいそいそと箱に収めた。
 キラキラ光るピンクのリボンを結び手の平にのせる。
 形に懲りすぎて当初の予定より小さくなったがまあまあの出来だ。
 これも可愛いイラストの描かれた小袋に入れ、職場であるISOの研究施設に出向くと運良く車から降りたばかりのジョーと出会えた。

「おはよう、ジョー。はい、昨日のお約束のもの」
 差し出されたそれを、しかしジョーが眉をしかめた。なんか全体がピンクでピカピカしている。手に取るのが恥ずかしい。
「どうしたの?忘れちゃった?昨日─」
「いや、覚えているが」ボソボソ言って、「小さいな。こんなサイズがよくあったものだ」
「小さくたって中味は逸品よ。私が作ったんだもん」
「買ってきたんだろ?」
「違うわ。作ったのっ」
「だからそれってマズイと思うぜ」
「マズイマズイって失礼よ」
「だってよ、おれ達はまだ未成年だからな。ましてやここで手渡すなんてやっぱマズイよ。こーいうのは裏でそっと─」
「こそこそするなんていやよ。いいからっ」淳は小袋をジョーに押し付けた。「マズイかどうかは食べてから言って!」
「食べる?」ジョーは再び眉をひそめ、だが小袋から小さな箱を取り出した。リボンを引っ張りフタを開ける。「なんだ、これ?」
「なにって、バレンタインのチョコレートよ、手作りの」
「バレンタイン?」一瞬キョトンとした目を淳に向けたが、「あー、義理チョコとか友チョコとか同僚チョコとか─女の子がチョコを配る日かぁ」
 どうして“本命チョコ”がないんだ?
「なんだ、おれはてっきりバランタインかと」
 それはウイスキーだ。
「そんなもの作れるわけないじゃない。第一私達はまだ未成年よ」
 ああ、だから、“それはマズイ”と言っていたのか。
 ん?裏でそっと?

「おかしいと思った。ま、いいや。サンキュ」
 箱からチョコを取り出す。ハート型の上に青い車が乗っていた。もちろんそれもチョコレートで出来ている。
「なんか食いづらいな」
 再び眉をしかめるジョーに、助手席に乗っているのはワタシ型のチョコなのよ、と淳は1人にんまりとした。が、ジョーが箱を小袋に仕舞う。バレた?
「た、食べないの?」
「あとで食べるよ」
「いま食べてよ」
 ワタシ型チョコがちゃんとジョーの口に入るか確認しなくては。
 ジョーの事だ。うっかりしてるとリュウにでもあげてしまうかもしれない。バレンタインの大切さが、淳の心がいまいちわかっていないジョーだ。
「ひと晩で作ったらなんでも言う事を聞くって言ったわよね。だから聞いて」
「・・・なんなんだよ、もう」
 ブツブツ言いながら、しかし確かに自分が言った事だ。仕方なく研究施設の入口でジョーは淳の手作りチョコを口に放り込んだ。
「これでいいだろ」
 そのまま行ってしまう。淳はほっと胸を撫でおろし、そのあとに続いて施設内に入った。が、
(なんでも言う事を聞いてやる、か・・・。ちょっともったいない事したかな)
 いやいや、それはホワイト・デーまで取っておこう。
 3倍、いや、5倍返しにしてもらい・・・いや、その頃には今日の事なんか忘れているかもしれないな、あいつは。
(こーいう事は学習しないしなぁ)
 淳は寝不足の目を擦り頭を振るとメカニック・ルームへと急いだ。


バランタイン2

     違っ!
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15:44  |   Jのものがたり  |  TB(0)  |  CM(8)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●覚書き

「Jのものがたり」はあまり難しい事は考えずに、一気書きができるからいい♪

ジュンはどうしたかな。健に渡せたかな。

淳?
・・・たぶん発展しないで、もう少しこのまま、かな(-"-)
淳 | 2013.02.14(木) 15:48 | URL | コメント編集

●おおお!

>ハート型の上に青い車が乗っていた
まさに「For Joe」のチョコレート!
涙ぐましい淳の努力が伺えます。
でも肝心のジョーはチョコより酒なのね(笑)

淳とジュンとのガールズトークも楽しいわe-343
へい | 2013.02.14(木) 16:34 | URL | コメント編集

●へいさん

さっそくのお越し、ありがとうございます。

>>青い車が乗っていた
チョコレートではなくて、青い車のプラモが欲しいな~と思って。
ちゃんと「車型」を忘れない所が可愛い?

>淳とジュンとのガールズトーク
大丈夫かな。読み分けできました?

ジョーと♡になりたいけど、そうしたらこのものがたりが終わってしまうような気がして・・・でもこのままでも可哀想だなぁ、淳(-"-)
淳 | 2013.02.14(木) 17:48 | URL | コメント編集

●My Funny Valentine

報われなくても(?)なおチョコにこだわる、淳とジュン。
惚れた弱みもあるでしょうが、乙女なふたりの気持ちが通じるといいのにね

>助手席に乗っているのはワタシ型のチョコ
いいね、それ(*´∀`*)
スモークガラスにしないとジョーにバレんたいン・・(苦)

>ちょっともったいない事したかな
うんうん
でもお楽しみは先にとっておきましょう^^
響子 | 2013.02.14(木) 18:48 | URL | コメント編集

●凄~い!

こんぱんは。
相当ご苦労なさった筈ですね!
そんなに凝ったチョコレートだったとは。
それも一口で入るような小さい物を作れるなんて、淳さんは天才的だわ!

食べて貰うだけじゃ勿体無いな~。
ジョーが何でもする、なんて言うのは百年に1度の出来事かもしれないのに(笑)
minako | 2013.02.14(木) 19:05 | URL | コメント編集

●響子さん

>報われなくても(?)
なにせ・・・40年追っていますから。
でもなかなか捕まえられない。
1人の腕の中に収まる人ではありませんからね。

>ジョーにバレんたいン・・(苦)
あはは・・・バレなかったと思うわ。
そのまま素直に飲みこんでくれていると思うけど・・・。
「やっぱ食いずらいな・・・げっ!溶けた人型が!のろいか!?」

>お楽しみは先にとっておきましょう
ええ、どこで料理してあげようかと。
あ、料理される方がいいな( ´艸`)
淳 | 2013.02.15(金) 11:53 | URL | コメント編集

●minako さん

>一口で入るような小さい物
だって、バレたら食べてくれないかもしれないでしょ?
なのでわからないようにして飲み込ませようかと。
リアル淳はぶきっちょだけど、この話の「淳」はメカニックなので器用なのよ。

>百年に1度の出来事かもしれないのに
そうですよねー。あとで後悔しました。
でもこの時の「淳」はとにかく飲み込ませようと─ ← それしか考えていない

あ、この日が百年目で、明日からはまた百年が始まる、は?(^.^)
淳 | 2013.02.15(金) 12:00 | URL | コメント編集

●覚書き2

実は、前日に仕上げた時は、
『再び眉をしかめるジョーに、助手席に乗っているのはワタシ型のチョコなのよ、と淳は1人にんまりとした』

で、終わっていたのだが、当日(14日)になって、「あ、言う事を聞いてくれる約束はどうなったんだろ」と思い出し、急遽その先をくっつけた次第だ。
minakoさんの言うとおり、こんな事をジョーが言うなんてめったにないので書く方も(淳)も忘れていた。

どうしても食べてほしかったしね。いいか(*^_^*)
淳 | 2013.02.15(金) 12:26 | URL | コメント編集

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