2013.02/22(Fri)

パニーノには


「ここがスナックになるんかいのぉ」バギーから大きなダンボール箱を運んでいたリュウが、ひと息ついてイスに腰を下ろした。「博士がよく許したの」
「最初に話した時は目くじらを立てて、いい顔しなかったわ」
 ジュンが自分の目尻を押さえて引き上げた。似てる~とジンペイが笑う。
「でも若い人の集まる所の方がいいって粘ったの。色々な情報が取れるし、私達だって紛れ込めるでしょ?」
「確かにそうだな」カウンターの奥から健が出て来た。そこは食料庫になっている。「冷凍庫の設置ができたぜ」
「ありがとう、健。助かるわ。業者に頼むと高いのよ」
「そんなもの、博士に頼めばいいじゃないか。費用は出してくれるだろう?」
「博士が関わったら、とんでもなく豪華なスナックになりそうだわ。最新式の機器が入って料理も飲み物も全部ロボットが作って、壁がコンピュータで埋まって」
 ありえるかも、と3人は思った。
「それにみんなも一人暮らしになるんだから、食事を提供できればいいと思って」
 ありがたいが・・・ジュンの料理ではちょっと怖い。
 しかしそれは彼らには必要な事だった。たとえバックはISOだとしても日々の暮らしは彼らだけの力で成り立たせなければならない。少なくとも周りにはそう見えるように。
「ところで、ジョーは?手伝いには来ないのか?」
「声は掛けたんだけど・・・。手伝いは無理でもその後にちょっとした開店パーティをしようと思ってるから」
「ジョーの兄貴も来ると思ったから、おいら5人分注文しちゃったぜ」
 どうやらパーティのご馳走はデリバリらしい。これから食べ物を扱う所なのにそれでいいのか?と思ったが。
「おら、どうしても納得できないんじゃ」ポツリとリュウが言った。「なんであいつが科学忍者隊の一員なんじゃ」
「え?」
「なに言ってるんだ。今頃」
「わかってるわ。しかしのぉ・・・」
 大きな体をモソモソと動かしリュウはイスに座りなおした。
「確かにあいつは体も強いし動きも素早い。戦闘センス・・・ちゅーのかの・・それもある。だが、おら達の仕事は何よりもチームワークが大事じゃ。なのにあいつは」
「リュウ」
「みんなだってそう思っとるんじゃろ?昨日の訓練の時、あいつは事前に決めておいた作戦を無視した。おかげでおらとジンペイは敵方のワナに落ちるところだったぞい」

「訓練じゃなかったら、死んでたぜ」
 いつの間にそこにいたのだろう。開いたドアの横に長身の影が見えた。
「訓練だったからあの程度で済んだんだ。作戦を遂行するのも大事だが、実戦では状況はこちらの都合よくいってはくれないぜ」

 訓練の内容は決まっていた。が、その最中に彼らには伝えられないまま急に内容が変更になったのだ。
 実戦にストーリーなどない。急な変化にどのように対応できるか─の、いわば〝訓練〝だった。

「昨日だけじゃない。この前だって─」
「もうやめろ、リュウ」健が口を挟んだ。「確かにジョーの行動は作戦通りではなかった。だが彼が動かなかったら、おれ達は全滅していたかもしれない」
「だったらそう言えばいいんじゃ。それを何も言わずに急に─」
「戦いの最中にいちいち講釈つけていられるかいっ」ジョーの足が動き、バタン!とドアが閉まった。「遊びでやってるんじゃないんだ。開店パーティなんかしてる場合じゃ─」
「ジョー」
 ジュンが小さく声を上げた。と、さすがに気まずげにジョーは口を閉じた。
 と、そこへ、
「お待ちどうさま、ハネス・デリバリです」大きなBOXを抱えた青年がドアを開けて入って来た。「Bセット5人前、お届けにきましたー」
「あ、こっちこっち」
 グッドタイミング、とジンペイが青年を招き入れる。
 彼はBOXを言われたテーブルに乗せ、中から次々と料理を出して並べた。
 ハムとから揚げ、フライドポテトの定番の盛り合わせに、皿いっぱいのミモザサラダ。厚切りベーコンやトマト、レタスの挟まったパニーニ、ザワークラウトが添えられたヴルストや、パエリアなどなど・・・多国籍に渡っている。
「容器は明日の午後に取りに来るますから」
 そう言うと青年はペコッと頭を下げ帰って行った。

「飲み物を出すわ。手伝ってジンペイ」
 ジュンに呼ばれたジンペイがカウンターの向こうに消えると、ホールには年長組の3人が残った。
 イスに座って口元を小さく曲げているリュウ。腕を組みそっぽを向いているジョー。その間に立つ健。
 と、ジョーが踵を返してドアに向かう。
「ジョー、これから皆で─」
「マシンの整備があるんだよ。お前らもちゃんとしておかないといざという時に使えないぜ」
 振り返り言うジョー。と、
「あれ、ここもう開店してるじゃん」大柄な男が5人、入口から顔を覗かせていた。「ちょうどいいや。ここにしようぜ」
「すまんのう。まだ開店前なんじゃ」
 ゾロゾロと店内に入って来た男達にリュウが柔らかい口調で言った。
「一杯でいいから飲ませてよ。おれ達、他じゃ飲ませてもらえないのよ」
 ヘラヘラと笑う男達。そういえばこいつら、ここら辺りの店では有名なトラブルメーカーだったな、と健は思った。
「悪いのう。まだ準備の途中なんだわ」
 あくまでも穏かに言うリュウ。だがとうにイスから腰を上げ、男達を牽制するようにカウンターを背にした。
 健もこちらに有利なようにリュウとの位置を調節する。それは意識して、というより、今までの訓練で身に付けた自然な動きだった。男達には見破れないだろう。
 だが、ジョーだけは動かずにいた。腕を組んだままドアに寄り掛かり、お手並み拝見という目で2人を見ている。
 確かにこんな男達相手にこちらは1人でもおつりがくる。
「開店前の店内を壊すわけにはいかないのう」
 ニヤリと、リュウが健を見た。普段はのんびり屋の彼だがそこは科学忍者隊。小さな目がキリッと光り、口元が立ち上がった。
「そうだな」
 健は表情を変えない。が、これが一番怖い。気の毒に、とジョーはかすかに口元を歪めた。
「表で話し合わないか?」
 つまり一戦交えようという意味だ。
 明らかに年下の健たちの落ち着いた・・・いや、場慣れした態度に男達は顔を見合わせたがここで引くわけにも行かない。頷くと先に表へと出た。
「さて、ちょっと行ってくるか」
「ジョーは行かんのかいのぉ。運動になるぞ」
「おれはもうたっぷり体を動かしてきたからな」
 ヒラヒラと手を振りジョーが見送る。

 誰もいなくなった店内でジョーはテーブルの上のご馳走に目をやった。
 5人分と言っていたから自分の分もあるのだろう。勝手にパーティの参加人数に入れられていた。
 並ぶご馳走に珍しい物はないが、なぜかどんな高級品より暖かく優しく・・・うまそうに見えた。
 だが、パニーニを見ると眉をしかめた。手が動く。が、
「なんじゃ、あいつら。食前の腹減らしにもならん」
 ドアが開き2人が戻って来た。
「いいじゃないか。あれ以上やったら面倒な事になる」
 汗はもちろん、息ひとつ乱れていない2人。
「思ったより遅かったな、2人とも」
「優しく説教してきたからな」
「ふん」
 優しく言う健の横を通りジョーはドアに向かった。
「食べて行かないのか」
「マシンの整備があるって言っただろ」背を向けドアに手を掛けて、が、フッと振り返る。そして、「・・・パニーノにはプロシュットだろ」
 ドアが閉まった。
「やっぱあいつとは仲良くなれんわ」
 温厚なリュウだが今は頭から湯気を出し、ジョーが出て行ったドアが閉まるのを見ていた。
 しかしこういう態度もチームワークを損なうと気がついたらしい。ちょっと気まずげに話を替えた。
「しかしこのあたりはガラが悪いのう。大丈夫かいな」
「ジュンの方が強いさ」
「そうじゃな。さー、ジョーがいらないんならおらが2人分食ってやるぞ」
「太るぜ、リュウ」
「かまわん、ジョーのせいじゃ。何かあったらあいつに責任を取ってもらう」
 リュウの明るい声に健はちょっとほっとした。


パニーニ


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Comment

●覚書き

普通、巨大な敵と戦うならそれ相当の環境(たとえば専用の基地に住み込む、など)に暮らすと思うが、彼らはどうして街中に暮らすことになったのだろう。

やはり情報収集のため?←専門の部署があると思う
やりたい事をやる←それくらいの自由は・・・
いつも顔を突き合わせてるのはいやだ←おいおい
なんとなく←1番ありそう

もちろんその方が話が広がって楽しいし、こうしてフィクも書ける。
淳 | 2013.02.22(金) 12:14 | URL | コメント編集

●こんにちは

こちらも222記念作品のアップですね。
私は午前中外出していたので、これから妄想です。
某所でのチャットには間に合わせないと……。

本編の中で、彼らの『表稼業』が設定された理由には余り必然性を感じませんね。
>その方が話が広がって楽しいし、こうしてフィクも書ける
仰る事とても良く解ります。
本編で語られていない部分を私達が妄想する事が出来るので、そう言った意味では余り書き込まれていない部分は妄想し甲斐がありますね。
minako | 2013.02.22(金) 12:44 | URL | コメント編集

●minakoさん

こんにちは~(^O^)/
コメントありがとうございます。

>必然性を感じませんね
そうですね。
当時は、幼かったので(?)ふ~ん、そうなんだ。あっちこっち忙しいね、と納得していましたが。

>本編で語られていない部分
当時は細かい所までガチンガチンに固めていませんでしたからね。
なのであとになって(人に寄って)言ってることが違うので困りますが。
でも、そこを色々考えるのが楽しくて。

フィクなので自由に書けますが、なるべく本篇に沿うような形にしたいですね。
淳 | 2013.02.23(土) 16:48 | URL | コメント編集

こんばんは。

楽しく(イメージ)読ませていただきましたv(=∩_∩=)

きっとこんな感じで会話しながらだったのかもって
入り口のそばの壁に腕を組みながらもたれかかるようなシーンを
本篇にもあったようなそのことが浮かんできました。
neko-shippo | 2013.02.23(土) 21:56 | URL | コメント編集

●neko─shippoさん

まあまあnekoさん。
このような僻地ブログによくいらっしゃいました。
コメントもいただき、ありがとうございます。

淳は普段この時間にネットはしないのですが、今夜はなんとなく入りたくなって・・・それでnekoさんのコメントを早く読むことができて嬉しいです。

楽しく読んでいただけましたか。そのお言葉がまたまた嬉しい。
なにげない雑談ですが、こういうシーンが好きですし、もっともっと見たかったです。

>もたれかかるようなシーン
これはきっとジョーファンはみなさん好きな格好だと思いますよ。
想像するだけで♡♡ですもの。
淳 | 2013.02.23(土) 22:09 | URL | コメント編集

●ジュンの

ジュンの粘りでできたんですね、スナックジュン♪

これで周囲を気にしないでゴーゴーを踊ったりギターの演奏ができるもんね(違っ)
それにしてもとうとう最後までスナックジュンへ博士は来ませんでした
物陰からこっそり覗いていたか?スパイを送り込んでいたか?

「ジョーはチームワークを乱す恐れがあるので各自のメカが合体しないとミサイルを撃てなくしたほうがいいです」
なーんてスパイから報告を受けていたらヤだなぁ
響子 | 2013.02.24(日) 19:53 | URL | コメント編集

●ふふふ

年長3人の、まだ戦いが始まる前の距離感がよく出ていると思います。
決して仲が良いわけではないけれど、互いの力量は認めている・・
読んでいてとても心地いい~ ←危ないです(笑)
へい | 2013.02.25(月) 15:25 | URL | コメント編集

●響子さん

こんにちは~。

>ジュンの粘りで
だって博士が勧めた、には無理があるじゃない?
ジュンが本気で迫ったら博士も・・・怖い?

>スナックジュンへ博士は来ませんでした
案外、自分が変装して来てたりして・・・。
「おねえちゃん、あれ─」
「しっ、知らないふりをするのよ」
「そうだね。おいら達の事を心配してくれてるんだし・・・楽しそうに踊ってるし」
あ、いかんいかん。

>スパイから報告を
それをジョーに知られたら・・怖い。
淳 | 2013.02.26(火) 11:46 | URL | コメント編集

●へいさん

いらっしゃいませ、へいさん。

>戦いが始まる前の距離感
そうそう、それを出したかったの!
いくら正義の味方でも最初から一致団結!というわけにはいかないと思う。個性的なコばかりだし。

>仲が良いわけではないけれど
どの辺りからどうやって歩み寄ったのか。
興味があります。

>読んでいてとても心地いい~ ←危ないです(笑)
書いていてとても心地いい~ ←危ない時は一緒だぞ
淳 | 2013.02.26(火) 11:53 | URL | コメント編集

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