2010.03/12(Fri)

Have a nice day

「よう、ジンペイ。コーヒーだ。それからサンドイッチ。ベーコンとトマトをたっぷり挟んでくれ」
「景気いいね、ジョー」
 久々にスナックJに顔を出したジョーは機嫌が良かった。こういう時は懐が暖かい時だ。注文したコーヒーの銘柄も、いつもよりワンランクアップしている。
「誰かを2、3発ぶん殴ったのかい?それともナイフをチラつかせて─」
「お前なァ」
 眉を寄せ、向けてくる灰色がかった青い瞳が─しかし本気で怒っているわけではないのは、わかる。
「週末に参戦したレースで優勝したんだ。それで少しだが賞金が入ってよ」
「なるほどね。ついでにケンのアニキのツケを払ってくれると嬉しいな」
「なんでおれが奴のツケを払わなきゃいけないんだ」
 機嫌はいいが、そこまで浮かれてはいない。第一そんな事をしたら〝余計な事をするな〟と睨まれる。なにせ誇り高きリーダーだ。仲間の世話は焼いても自分が心配されるのはいやがるのだ。
「そうだ、ジョー。お姉ちゃんにプレゼントしたいんだけど、何がいいと思う?」
「なんだよ急に。そういえばジュンの姿が見えないが」
「今、買い物に行ってる」
 ジンペイはコーヒーと、ベーコンやトマトがいつもより多く挟まれたサンドイッチをジョーの前に置いた。そして、これおまけだよ、とマカロンを2つ添えてくれた。
「おいらの誕生日は、いつもお姉ちゃんがお祝いしてくれるんだ。だけどおいらはお姉ちゃんにプレゼントもあげた事がなくて・・・」
 そういえばジュンも、ジンペイ同様自分の本当の誕生日を知らないと聞いた。幼いジンペイはお祝いを単純に喜べるが、ジュンは・・・。
「だから今年はおいらがお姉ちゃんのお祝いをする。まずはプレゼントだ。おいらのこづかいで何かお姉ちゃんが喜びそうな物はないかな」
(ジュンの喜びそうな物ねえ・・・)
 サンドイッチを手にしたまま、ジョーは考えた。
 女の子へのプレゼントの定番であるネックレスやピアスはジュンにはピンとこない。プロポーションはいいので、胸の開いた、体の線の出るドレスを着ればそれなりに様になるだろうが、あのジュンが喜ぶとは思えない。   第一、年中一張羅で過ごさなければならない身に、アクセサリーやドレスはかえって酷だ。
(ジュンが喜ぶといったら、やっぱり・・・)
 何か貰うのもいいが、1日、ケンと2人だけで過ごす事がジュンにとっては1番嬉しい事だろう。どこでもいいのだ。高級レストランでなくても、思いを寄せる相手と一緒にいられるのなら─。
 だが、ケンがジュンとのデートを承知するだろうか。
 もし、うまく連れ出したとしてもケンの事だ。ジュンが喜びそうな状況に持っていけるとは思えない。
 それどころか〝じゃあ、皆で行こう〟と言い出しかねない。
 たとえそこが美しい夜景の見える公園のベンチだとしても、5人一緒ではいつもと同じだ。そんな状況に参加したくはない。
(ツケをチャラにすると言って脅せば・・・)
 だがそれをじん平の口から言わせるのは可愛そうだし、万一バレた時のジュンが怖い。
 それに・・今のところジュンには仲間以上の感情は持っていないが、それでも一応女の子だ。ケンだけが良い思いをするのも、なんだか癪に障った。
「今年はおいらのお祝いの前に、お姉ちゃんにプレゼントを渡したいんだ」
 期待を込めた目でじっと見つめる弟分に─おまけも食っちまったしな─と、ジョーは仕方なく癪の種をどこかへ蹴飛ばした。
「そういえば、ノーザン・コースター・ランドが開園一周年記念で乗り放題のフリーチケットを出していたな。それもノーザン・テラスのランチ付きで」
「へぇ、おいらあそこのトルネード・アタックが好きだな」
 ノーザン・コースター・ランドは街中にかなりの敷地を持つ遊園地で、その名のとおりジェットコースターばかり集められている。
 ジョーは行ったことはないが、ジンペイやリュウは何度か行っていて、話しには聞いていた。
「半額だっていうから、2枚買ってもお前のこづかい内で済むぜ」
「どうして2枚もいるんだい?おいらと一緒に行くの?」
「それでもいいが、もっとジュンが喜びそうな相手がいるだろ?」
「あー、そうか!」
 パチンとジンペイが指を鳴らした。
「ランチ付きだもんな。断るわけないや」
 弟分のジンペイにまでしっかりと見透かされているリーダーに、ジョーは思わず苦笑した。
「少しだが、カンパしてやるぜ」
「ありがとう!そうと決まったらおいら早速買ってくるよ!店番しててねジョー!」
「あ、おい、ジンペイ!」
 ジョーが差し出した札をサッと取りカウンターをスルリと抜けると、ジンペイはドアから飛び出して行った。
「客が来たらどうすんだよ」
 今は自分しかいない店内を見回しーが、これ幸いとドアの札を〝Close〟に架け替えた。そしてカウンターに戻り、店番のバイト料だ、と1番高いコーヒー豆のカンを開けた。

 翌日、ジョーは契約している郊外のサーキットコースで愛車を飛ばし、ねぐらにしているトレーラーハウスに帰り着いたのは、西の空に大きな星が輝き始めた頃だった。
 ここ2、3日は博士からのコールもなく、懐はまだ暖かい。今夜は二丁目にオープンしたばかりの、ちょっと高級なレストランに行ってみようかと考えながらステアリングを繰るーと、トレーラーハウスの前に人影が見えた。ケンだ。こんな所で何をしているんだ?と彼の前に車を止めドアを開けると、
「ジンペイに余計な事を言ったのは、お前か」
「・・は?」
 あいさつ抜きの、いきなりの言葉にさすがのジョーも目をパチクリさせた。
「ジュンに、おれを誘ってコースター・ランドに行く様に仕向けただろ」
「行って来たのか。コースターはともかく、ランチはよかっただろ?遊園地のレストランにしてはうまいと評判らしい。おれもカンパしたんだぜ」
 感謝しろよ、と続けようとしーしかしジョーは口を閉じた。
 トレーラーハウスの小さなナイトライトの中、ケンの顔色が悪い。いや、怒っているのか?
「冗談じゃない。コースターに何回乗ったと思ってるんだ。それもトルネード・アタックとかスピン・ファイターとか・・急上昇して回って、またすぐに落ちて─。ジュンの奴、なぜかそんなのばかり選んで乗るんだ」
「・・・・・」
 苦手だったか?そんなの・・。
「だったら、乗らないと断ればいいじゃないか」
 ジュンにしてみれば少しでもケンを楽しませようと思ったのだろう。急上昇も急旋回もガッチャマンにはお手のものだ。
 しかし、気が進まないのにジュンと一緒に乗り続けたという事は・・彼女の気持ちを察したのか。こいつにしては上出来だ。
「・・・ジュンがコースターに乗ってから、ランチにしようと言うから・・」
 ・・・なるほど。
「お前がジェット・コースターが苦手だとは知らなかった。あんなのG1号機やGPに比べれば可愛いもんだろう」
「コースターを操縦しているのは、おれでもリュウでもない。知らない誰かだ。そんな物にパイロット用のGスーツも着ないで乗るんだぞ」
 着るか?遊園地のコースターで。
「自分で操縦しているのなら急降下でも急旋回でもいい。ブラックアウトやバーディゴになってもなんとかできる。だがコースターはおれの意思とは関係なしに上がったり下がったりするんだ。そんな物に、他人の操縦で安心して乗っていられるかっ」
「・・・・・」
 そこまで言うか?コースターごときに─。
 しかし考えてみればジョー自身、自分が運転していれば崖を走り降りようとガードレールを飛び越そうとかまわないが、誰かの運転でそれをやられたら、ちょっといやだ。
 運転のベテランが自分がステアリングを握っている時は平気だが、助手席に座ったら車酔いしてしまうのと同じか?
「おかげでその後のランチは味がわからなかったし、さっきまで気分が悪くて、食欲もなかった」
 食欲がないって?それは一大事だ。今、スクランブルがかかったら科学忍者隊の存亡に係わる。
「あー、すまん。そこまで気が回らなかった」
 珍しく素直に謝るジョーに、少しは溜飲が下がったのか、ケンはニコッと口元を緩めるとジョーの愛車の助手席に体を滑り込ませた。
「送って行けというのか?バイクはどうするんだ」
「置いといてくれ。ワイン一杯でも飲酒運転はまずい」
「?」
「気分が悪かったって言ったろ?だから夕飯もまだなんだ。Jでいいから奢れ」
「・・・・・」
 カンパしたうえに、なんでメシまでたかられるんだ?と思ったが・・先程とはうって変わった明るい空のような瞳に見上げられ、また忍者隊の存亡とを考え・・・ジョーは小さくため息をついた。
 運転席にUターンし、ギアに手を掛け─まてよ、こいつジンペイからおれの賞金の事を聞いて─。
「二丁目の新しいレストランでもいいぞ」
 自分に向けられたジョーの疑いの眼差しに、ケンはさらに、その空色の瞳を細くしジョーに向けた。
「・・Jでいい」
 再びため息を吐き、ジョーはギアをひっぱたいた。
スポンサーサイト
15:34  |   Gフィク  |  TB(0)  |  CM(5)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

これ初めて読んだときに笑った笑った。
で、ジョーはきっと以前にも健にしてやられたことがあるのにまたやられたんだろうなぁって思うとまたおかしくって…。

そして、よく考えもしないでヘンなマンガを描かせていただいたりしましたっけ。
ホントにすみませんでした。アレは忘れてください<(_ _;)>
へいさんのところにも書きましたが、私も別名で別のところにこの企画モノをアップさせていただきます←まねっこ^^
南部響子 | 2010.03.12(金) 23:26 | URL | コメント編集

●書いていて私も楽しかった

いらっしゃいませ、響子さん。
Gフィク復帰の記念すべき第1作です。なにげに書いた冒頭がお話になってみなさんに読んでいただいて、ほんと嬉しかった!もう書けないと諦めていたのです。

>以前にも
あはは・・・、私もこれはきっと何回か繰り返されているのでは、と思っていました。ジョーだってそんなにいつもお金持ってないだろうにね。

>アレは忘れてください
恩ある響子さんのお願いでも、それはイヤです!
だってあのジョーはとても気に入っているんですもの。↑お話にアップしたいぐらいです。

>別名で
はい、お邪魔しました。
「そうか、そこへ持って行ったかー!」が正直な感想です。
私も2人の「男と男の約束」が気になって色々と模索していたので、正直「やられたー!」でした<(_ _)>

でも読んでいるうちに、1つフィクを思いつきました。まだ頭の中でとっ散らかっている状態ですが・・・しっかりネタ帳に書いてます。
書きたいものはたくさんあるのに、なかなかストーリーにはなりません。
じっくり楽しみながら行こうと思います。
じゅん | 2010.03.14(日) 16:09 | URL | コメント編集

●管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
 | 2012.01.18(水) 15:25 |  | コメント編集

●過去作品へのコメント、失礼致します

淳さん、こんにちは。(^-^)
ジョーと甚平、そしてジョーと健の会話を楽しく拝読致しました。
ジョーは甚平を子供扱いしているようで、実は弟分としてちゃんと見ていると思っていたので、何だか嬉しくなりました。
ジョーはなかなか気が効く提案をしたのに…。
カンパして上げるあたり、さすが~♪と思ったのに…。
健はそう来るのか?
と、思い切りウケました~。(^0^)

自分の操縦は大丈夫でも、人のは駄目なんだ…。
私は免許を持っていないので、そう言った気持ちになるとは知りませんでした。

また他の作品も読みにお伺いしますね。
楽しませて戴き、ありがとうございます。(^-^)
真木野聖(minako) | 2012.12.11(火) 14:28 | URL | コメント編集

●真木野聖(minako) さん

まあ、昔の話を読んで、感想までいただけるなんて!
失礼なんてとんでもない!嬉しいです。

これは昔ガッチャフィクらしきものを書き、これはアカンと思い封印して・・・30年ぶりに書いたお話です。(←昔のは「若気の至り」・・です)
ちょっとふざけすぎたかな、と思ったのですが、まあこれが淳風Gフィクだと居直りました。 ← こればっかり

でも、改めて読むと直したい所ばかりですね。赤面ものですわ。
淳 | 2012.12.12(水) 16:09 | URL | コメント編集

コメントを投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除するのに必要
SECRET  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

Tracback

この記事のトラックバックURL

→http://g2joe.blog97.fc2.com/tb.php/5-75cc5118
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | BLOGTOP |