2011.08/11(Thu)

○○した女(ep.R)

 バンッ!
 どこかで爆発音がした。淳はとっさに身を伏せる。だがこのままここにいるわけにはいかない。
 周りを確認する間もなく立ち上がると、煙が迫ってくるのとは反対の方へと走り出した。
 バンッ!
 再び爆発音が。
「淳!」ジョーの声がする。どこ?どこにいるの?「飛べ!」
 その声に迷う事なく淳は飛んだ。
 ドーン!
 肩から着地した。

「お前、ほんとーに鈍いな」
「なによ。飛べって言うから飛んだんじゃない」
 イタタ・・・と肩を押さえながら淳が立ち上がった。
「お前さぁ、このくらいの事ができないと科学忍者隊にはなれねえぜ」
「ならないもん!」
 ここISO研究施設G区の一角にはスポーツジムと訓練施設がある。
 180キロのベンチプレスを軽々と持ち上げていたジョーを珍しく淳が褒めた事で気を良くしたのか、“鍛えてやるぜ”と、いらん親切を発揮し、〝爆発する建物から脱出する〝訓練を指南してやる、と言い出したのだが・・・。
「ちょっとハードル高かったかな。こっちの、〝ナワで拘束された状態からの脱出〝というのはどうだ?」
「・・・私になにをやらせたいの?」
 体術や攻撃技の訓練は受けている。Gスタッフである淳はGメカや
の5人を守る義務があるからだ。
 だが、自分が忍者隊になれない事もよくわかっている。レベルが違いすぎるのだ。
「もっとも、もしお前が入ったらジュンと被っちまってややこしいもんな。ん?お前は何になるんだ?」
「え?」
 じーと自分を見つめるジョーの目に淳はちょっと焦った。
「フラミンゴの淳?いや、そんなに足が細くねえよな。カモ?あはは・・ネギのほかにナベやコンロも背負ってきそうだ。ああ、ペンギンなんていいかも。足短いしヨチヨチ歩くとこなんかそっくりで─」
「ジョーのバカ!」
 バシッ!
 ジョーの頬が鳴り、プイッと身を翻した淳が出て行った。ポカンと見送るジョー。が、
「・・コンドルでもいいかもな」
 そう呟いて、ふと辺りを見回した。

「おはようございます」
 IDカードを承認用トレイに押し当て淳は更衣室に入った。ロッカーを開け作業服に着替える。と、
 ヒソヒソ チラッ コソコソ 
「・・・・・?」
 室内にいたメカニックのメンバーの様子がいつもと違う。
 なにかミスしたのかしら、あたし・・・。あっ、きっとあれだ!
 急いで着替えると淳はメカニックチーフのバレンを探した。彼はいつものとおり喫煙室でゆったりとたばこをくゆらせていた。が、淳を見るとあわててたばこを消した。
「すみません、チーフ。昨日の報告書に一か所書き間違いが─」
「ああ、いいよ、大丈夫。あとで直しておくよ」
 あはは・・・と引きつった笑みを見せ、バレンはそそくさとその場をあとにした。
「?」
 この事じゃないのかしら。じゃあ、なに?
 考えてもわからない事はわからない。とりあえず淳はGメカの格納庫に向かった。
 と、すれ違う幾人もの所員達が淳を見て─その顔をまじまじと見るか、スッと目を逸らすか─。
 自分を怖がっているように見えるのは気のせいか。
(なんなのよ、いったい)
 変な眼で見られるとこちらも睨み返したくなる。だがそんな事をしたらますますややこしい事になりそうだ。と、
「淳」
 同じGスタッフのルシアだ。淳より年上だが入所は一緒だった。
「聞いてよ、ルシア。なんかみんながね─」
「ちょっと」ルシアが淳の腕を引っ張り、廊下の隅の休憩コーナーへと押し入れた。「あんた、ジョーを殴ったの?」
「は?」
「メカニックの淳がG要員のジョーをぶん殴ったって、もっぱらの噂よ」
「・・・あ」そういえば昨日・・思わず手が出て・・・。「そんな事ぐらいで─」
「そんな事って・・・あのジョーをぶん殴ったのよ。みんな何があったのかって想像を逞しくしているわ」
「だからか・・・」
〝あのジョーをぶん殴った女〝・・・そう見られていたのかと思うと顔から火が出そうだ。
 ジョーはG計画の重要なメンバーである。おまけにあの風貌だ。その彼を殴ったとなると、どんな想像されているかわかるような気がする。
「でも、ぶん殴ってはいないわよ。ちょっと
はたいた・・・・だけで─」
「それだってすごいわよ」うんうんと頷くルシアに淳はまいったな、と頭を抱えた。「おまけに彼、今日はまだ来ていないのよ。なんでも女の子に殴られたショックで寝込んでいるとか」
「まさかぁ。あのジョーがそんな可愛いわけないじゃない」
 だんだん腹が立ってきた。ジョーにひどい事を言われたのはこっちだ。なのになんで・・・ まるでこっちが悪いみたいに見られるのか。
「G計画にはなくてはならないかもしれないけど、プライベートを見れば失礼な奴よ」
「・・プライベートを知っているの?」
「・・え」
「すごいわ、淳。ぜひ紹介して!」
「・・・え」
「ジョーって見た目が怖いから近寄りがたいけど、けっこう人気があるのよね。もしかしたら健よりファンが多いかも」
「・・・そうなの?」
 淳の心がちょっと揺れた。ファンが多い?それって困る・・・。と、
「淳」低いがよく響く声がした。ハッと息をのみ恐る恐る振り返ると・・・。「ちょっと顔貸せ」
「・・・・・」
 一歩下がり、しかし淳は大きく息を吐くと、“あとでね”とルシアに言いジョーの後に着いた。

 行先は彼ら5人の控室だった。室内には誰もいない。入るとカチンとジョーが鍵を掛けた。 「朝から会うスタッフらが変に同情した目を向けてくるんだ」
「・・・・・」
「始めはわからなかったが、どうやら昨日の事が噂になっているらしい」
「・・・・・」
 一歩、ジョーが進むたびに淳は一歩後退する。
「どうしてくれる?」
「・・・・・」
 そう言われても淳にはわからない。
「男が女の子に殴られたと噂が広まったら・・どうなると思う?」
「・・・・・」
「表を堂々と歩けなくなるんだぜ」
「そんなぁ・・・」
 淳の後ろは壁だ。もう下がれない。
「〝目には目を〝って言うだろ。わかってるな」
 灰色がかった青い瞳が怪しく光る。右手がグーになっていた。
「わかったわ」
 淳も覚悟を決めた。どんな理由があっても人を殴る─実際には、
はたいた・・・・程度だが─のはいけない事だ。
「いいわよ、ジョー」
 淳は目を瞑って衝撃を待った。と、大きな暖かい手で自分の前髪が持ち上げられ、さらに暖かく柔らかい感触が・・・。
「今回はこれで勘弁してやるぜ」
 あはは・・・と高笑いと共に部屋を出て行くジョーの後ろ姿に、〝からかわれた!〝と思い、すぐには言い返す事も出来ずポカンとその場に突っ立っていた淳だが、やがて鼓動が大きくなり頬が熱くなってきた。
 そしてその額に残るかすかな感触にそっと手を添えて─
(こーいう事なら、また殴ってやろうかしら)
 と、密かにニンマリした。




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11:54  |   Jのものがたり  |  TB(0)  |  CM(3)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●覚書き

目を瞑らなければ良かったかな・・・


〝目には目を〝の使い方間違ってます、ジョー。
淳 | 2011.08.11(木) 11:56 | URL | コメント編集

●うす眼を開けて・・

殴られたお礼がおでこへのチュウとは・・!
そんなジョーの性格・・ステキだわ♪

そのあと髪をクシャってしてくれたら最高だったのにね。
あ、それはまたいずれ・・?むふふi-80
響子 | 2011.08.11(木) 22:38 | URL | コメント編集

●響子さん

いらっしゃいませ~。

ちょっと幼なすぎるかしら、ジョー。
でも18才だもんね。こんなもんよ、と居直る淳(←書き手の方です。ややこしいなぁ)

>髪をクシャってしてくれたら
今回はとりあえず前髪に触れてもらいました。
そのあとは・・うん、またの機会に・・・むふふv-344
淳 | 2011.08.12(金) 16:58 | URL | コメント編集

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