2011.09/22(Thu)

走り屋 前編(ep.R)


「ジョーが私をドライブに誘うなんて、どういう風の吹きまわし?」
「別に意味はねえよ。隣のシートが空いていたからさ」
 グルリと愛車の周りを一周し、異常がないのを確かめるとジョーはドライバーズ・シートに着いた。キーを差し込みエンジンを掛ける。
 本当はそんな事をしなくても指紋認証機能でドライバー─この場合はジョーのみだが─を認識して自動的にエンジンが掛かるのだが、彼はエンジンキーを差し込み回してエンジンを掛ける─という旧式を選んだ。
 外見は2000CCクラスのストックカーだが、その内部には最新の科学が詰まっている。
「ユートランドって1年中温暖な気候なのね。日本にいた頃は四季があって、季節がはっきりと分かれていたのよ」
「へぇ・・・」
「ジョーの国は?」
「日本は知らねえが、暑ったり寒かったりしたぜ」
 たぶんな・・・とジョーは思った。実はよく覚えてはいないのだ。
「海が見たいなぁ。灯台のある岬まで行かない?」
「デートじゃねえんだぜ。なんでそんなとこに行くんだよ」
 え、違うの?と淳は思った。まあ、予想はしていたけど・・・ちょっとガッカリだ。
「とにかく走るからよ。お前はエンジンの調子でも見ていてくれ」
 やっぱりそっちか。だが車は好きだし、運転している彼も好きだ。いい位置にいるよね、と自ら言い聞かせる事にした。
「エンジンは快調よ。私が整備したんだから」
 ブルーコンドル─ジョーは変身前の愛車をこう呼んでいる。
 彼らのマシンの中では唯一陸地しか走れないがジョーはそれで満足だ。変身すれば  時速1000キロを叩き出すマシンになるが、今はおとなしく安全運転で─
「ジョー、飛ばし過ぎよ。捕まったらまずいわよ」
「大丈夫。そん時はぶっちぎってやるさ」
「そうじゃなくってー」
 メータは160キロを指していた。だが車がいいのか彼の運転がいいのか、まるで滑るようにスムーズな走りだ。

 街中を抜けた。建物も店も、目に見えて少なくなる。それに比例してスピードが上がった。
「この道はよ、広くて整備されている割には車は少ないんだ。免許を取る前によくここで練習したもんさ」
 なんかとんでもない事を聞いたような・・・。
「博士の車を無断で持ち出して、で、そーいう時に限ってどこかぶつけるんだよな。博士の車はいつも新車さ」
 珍しく饒舌だ。ステアリングを握っていれば機嫌が良いのだ。

 やがて車はワインディングロードに差し掛かる。ここを右に行くと南部博士の海が見える別荘に行くのだがジョーは左にステアリングをきった。山を越えるつもりなのだろう。
 今日中に帰れるのかしら、と淳は思った。
(ええっと・・明日は遅番だから夕方までに出勤すればいいし・・・うん、大丈夫だわ)
 何が大丈夫なんだろう、と思うと頬が熱くなった。もしかしてジョーはその事を知っていて遠出に誘ったのでは・・・。
 そうならそうと先に言ってくれないと色々と準備があるのよ、女の子は。
「淳」
「も、もちろんOKよ!」
 そう、なにがあっても彼に付いて行くわよ、私。
「シートベルトをしっかり締めろよ」
「・・・へ?」
 ジョーに目を向け淳は驚いた。彼の顔つきが変わっている。
 こ、これってもしかして・・・。

 次の瞬間スピードが上がった。グオン!と背後からエンジン音が聞こえる。
 ブルーコンドルのじゃないわ。
 淳が振り向くといつの間に後ろから数台の車がブルーコンドルを煽っていた。
「思ったより早かったな。5台か。上等だぜ」
「な、なんなの、あの車」
「走り屋の集団さ。すごいテクニックの持ち主らしい。ネットで話題になってた。なかなか  お目に掛かれないらしいが、今日はラッキーだな」
 後ろの1台がブルーコンドルのリアを攻めてくる。軽く突っつきまたすぐに離れる。なるほど、なかなかのテクニックだ。
「なにが走り屋よ。暴走族みたいなものじゃない」
 車体にナンバーのついたこの車をレース仕様と勘違いしたのか、それとも相手をするのに不足はないと思ったのか向こうは容赦なくリアを、そして横づけして幅寄せしてくる。
 反対側は崖だ。落ちればブルーコンドルとて、ただでは済まない。
「ちょっと脅かしてやるか」
「変身しちゃだめよ」
「わかってるよ」
 さすがのジョーもそこまではやらないだろう。いや・・・、“チェッ“と舌打ちが聞こえたので そのつもりもあったかも。
(こんな所で何かあったら大変だわ。ブルーコンドルにもジョーにも)
 だが淳の心配をよそにジョーは相手をする気だ。何度もステアリングを握り直しその体から闘志のオーラが吹き出してくるのを感じた。
(だめね、これは)
 淳は早々に諦めた。



                                       つづく
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Comment

●覚書き

青い車には呼び名がないので、「コンドルマシン」とつけようと思ったが、シリンダーが回りそうなのでやめた。

そういえば本篇で、ストックカーに健達が乗っているのを見た事ないよね。
なぜかいつも他人(?)ばかり乗せてる。
淳 | 2011.09.30(金) 15:24 | URL | コメント編集

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