2012.02/15(Wed)

今日は何日?(ep.R)

「珍しいな、健」ジョーの声に健が振り向いた。「甘いものは苦手じゃなかったのか」
「ん・・・でもなあ・・・。せっかくくれたのに食べないと悪いだろ。それに甘い物もたまにはいいな」
 そう言って健は最後のひと粒を口に放り込んだ。
「くれた?これ全部?」健の前には少なくとも5、6個分のチョコレートの空箱がある。「へぇ、チョコのバーゲンでもやっているのかね」
「お前、知らないのか?昨日は─」は?と眉を八の字にするジョーに、「・・・いや、知らないなら  その方がいい」
 そう言われジョーもやっと気がついたようだ。
「バンアレンタイのナントカってやつか。くだらねえ」
「バレンタインだ。お前の国にはなかったのか?」
「さあな。あったかもしれないが女が男を追い掛け回してチョコを押し付ける習慣はなかったぜ」
 ちょっと・・・いや、大いに間違っているが。
「と、言う事は・・・淳からまだ貰っていないのか」
「そういえばここ2、3日見かけないな。ミスって居残り作業でもしてるんじゃねーの。って、なんであいつが出て来る!」
「素直じゃないねえ」ニヤリと健の口元が上がった。「今日はまだ格納庫に行ってないんだろ。早く行かないと他の男に獲られちゃうぜ、チョコ」
「べ、別にそんな物─」
 健が再びニヤリと笑い、ジョーは口を閉じた。こいつ、からかいやがって。
「とにかく、こんなくだらねえ事してるひまがあったらメカの整備をしている方がましだ」
 バタン!とドアが閉じられた。
「そういえばあいつ、学校にいた時もチョコとか貰ってなかったな」
 渡したいという女の子がいなかったのか、それとも断っていたのか・・・。人気はあったのにあの風貌が女の子を寄せ付けないのかもしれない。
 だがなぜか淳には通じない。それが強面を通しているジョーのイライラの原因にもなっている。
「いいペアになると思うけどな。じれったい奴だ」
 自分の事は棚に上げて、まだ開けていないホワイトチョコの箱を手に取った。

(そういえば今日はまだブルーコンドルの顔を見てねえや)
 この研究所に来たら必ず一度は格納庫の青い車を見に行く。
 そう、用があるのは車だ。あいつじゃない。
(健の奴、誰に貰ったのかな)
 今頃気になってきた。大方ジュンだろう。手作りかな。だったら気の毒に。
(別に欲しくはないけどよ。ジュンでさえ仲間に気を遣っているんだ。あいつも女なら少しは─)
「ジョー!」
 前方から声がしてジョーは思わず足を止めた。走ってくるのは淳だ。
 徹夜明けなのかいつもの作業服に長い髪を頭のてっぺんでひとつにし、今日は紫がかったピンクのシュシュでまとめている。化粧っ気もなく後れ毛を靡かせて─なんだかすごい形相だ。
 だが一生懸命自分に向かって走ってくる姿になぜかドキリとした。そして手には細長い箱が。
 なんだ、あいつ、ある・・んじゃねえか。
 ああ、そんなに急がなくてもいいのに。だが、おれは動かないぞ。あいつが来たければ来ればいい。
「ジョー」目の前で淳が止まった。ハアハアと息を切らしている。その姿がちょっと可愛いと思った。と、手にしている箱を差し出す。「これを」
「いいんだぜ、別に。おれは欲しいなんて思ってないし─」
「なに言ってるのよ。あなたが欲しくなくても受け取るべきよ」
 バンッと胸に押し付けた。開けてみると数十枚の書類が・・・。
「昨日また許可を取らずにブルーコンドルでコースを走ったでしょ。整備前だったのに。チーフがカンカンよ。でなくても始末書が溜まっているのに」
「・・・・・」
「サインしてチーフに提出してね」
「あ、おい」クルリと背を向け行こうとする淳をジョーが呼び止めた。「・・・これだけ?」
「もっと欲しいの?始末書」
「いや・・・」
「そう」肩を竦め身を翻した淳が、だが、チラリと瞳を向ける。「毎日ブルーコンドルに乗っているのに気がつかないのね。走る前には車内を点検するように言われているのに。こっちだってもう2日も前から準備しておいたのよ」
「は?」眉をひそめるジョーをひと睨みし、淳は今来た廊下を戻っていった。「なんだよ、あれ。準備って何を─」
 ふと口を閉じた。
  車内?何があるんだ?

「・・・点検・・するだけだ」
 自分に言い聞かせ、ジョーは格納庫へと急いだ。


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14:28  |   Jのものがたり  |  TB(0)  |  CM(3)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●覚書き

14日の夜遅く─もう日付も変わろうとしている時にふと思った。
バレンタインじゃない。なのにどうして「Jのものがたり」に話がないの!?
ここはジョーと淳の世界で、好き勝手書けるのに。今日のためにあるようなものじゃない!←オーバーです
で、急遽、指の向くままに一気書きした。

本来なら淳がジョーに、はにかみながらオズオズとチョコレートを差し出すところだが(・・そーかな?)、きっとあちこちで女の子をドキドキさせていると思うので(たとえそうでも、この話とは関係ない。完全にとばっちりだ)反対の意味でドキドキしてもらった。

・・・せっかくのバレンタインなのに、色気ないなぁ・・・

淳 | 2012.02.15(水) 14:35 | URL | コメント編集

わ~い。
こっちにもバレンタインのお話が!

そうか~
やっぱジョーはニブイのか?
(問題)鈍いジョーのために何を計画すればいいでしょうか?
(答え)V2計画←ブイが二つだから
で、バン・アレン帯が出てきたのね~
響子 | 2012.02.15(水) 16:11 | URL | コメント編集

●響子さん

>V2計画 バン・アレン帯
う、うわ!そこまで考えていなかった。
な、なるほど・・・←感心されても・・・

>ブイが二つだから
スパイVが出てきたらVの3乗になるなあ。
ますます鈍くなったら、どうしよう。
押しの一手だわ。ライバルもまたまた出てきそうだし。
淳 | 2012.02.16(木) 12:49 | URL | コメント編集

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